西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
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 加工者の実力を標準偏差で表す事例を前回と前々回で紹介しました。今回はその延長線上にある「工程能力指数」についてお話ししたいと思います。

 ここでいう「工程能力」とは「良品を造る能力」を指しています。もっと言えば、指示された仕様に対し、どれくらいぴったりと合わせて造ることができるか、です。1時間当たりに製品を何個造ることができるかを示す「生産能力」とは異なります。

 指示された仕様通りに毎回完璧に造ることができれば、品質に関する全ての問題は解決します。例えば、長さ「100mm」の仕様に対し、毎回必ず「100.000mm」にぴったりと造ることができれば最高ですが、現実には不可能です。工作機械の誤差や室温、加工者のスキルなどの影響を受けて「99.98mm」になったり、「100.05mm」になったりします。

 このように「ばらつく」ことを前提として、設計者は「ばらつき」の許される範囲を図面に表記します。これが「公差」です。公差とは「下限値と上限値を表すもの」なので、この範囲内にあればその製品は合格となります。

 今、図面に長さ「100±0.2mm」の指示があるとします。つまり、下限値は99.8mmで、上限値は100.2mmです。ここで、2人の加工者がそれぞれ100個造り、全ての製品が合格だったとします。では、この2人の実力は等しいのでしょうか。それとも差があるのでしょうか。

 例えば、Aさんが造った100個は限界値ギリギリとなる「99.8~100.2mm」の範囲であったのに対し、Bさんの造った100個は「99.9~100.1mm」だったとします。この場合、明らかにBさんの実力の方が優れています。これを数値で表す方法として、「範囲R」や「標準偏差σ」があるのです。このことは前回までに紹介した通りです。