國井 良昌=國井技術士設計事務所 所長
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國井 良昌=國井技術士設計事務所 所長
 
 次のような質問が私の事務所に寄せられました。

【質問】
 約2年前、國井先生のコンサルテーションを受けたプリンターメーカーの技術者です。先生は「失敗事例発表会」の開催を何度も促していましたが、その理由を、もう一度教えてください。また、このコラムの第8回「『お通夜』のデザインレビューよ、さらば」の記事を職場の仲間とともに何度も読みました。感銘を受けたので、早速、円陣を組んだ形式のデザインレビューを開催しました。その結果、学校形式とは異なり、斜め後ろを振り向けば、参加者全員の顔が見えて、確かにデザインレビューが前に比べると活性化しました。しかし、相変わらずの「お通夜」です。これはどうしたらよいでしょうか。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】
 私の2年前のクライアントですね。契約が切れた後も、何度か相談のメールが来たので、先月あなたの会社を再訪しました。お通夜の原因究明は簡単でしたよ。原因は、がんじがらめのデザインレビュー・システムの構築でした。この企業の設計部と品質保証部が協業で独自に作成し、「デザインレビュー・ガイド」と呼んでいました。それはまるで、設計者を追い詰めるためだけにあるようなものでした。これでは、お通夜は当たり前です。

真のデザインレビューを6W2Hで分析する

 本コラムの第2回では「技術者のコミュニケーション道具」と題して、6つの道具を紹介しました。その中でも筆者が最重要として指導しているのが、「6W2H」です。覚えていますか?  また、利用していますか? 当事務所のクライアント企業が、前述の6W2Hを応用してデザインレビューの意義を分析したのが図1です。

図1●デザインレビューの意義を6W2Hで分析
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図1●デザインレビューの意義を6W2Hで分析

 注目すべきは、「What」と「How」。まずは、「What」ですが、設計書を審査するのが、設計審査、つまりデザインレビューです。本コラムの第14回「スカウトされない日本設計者」の中で、「設計書がない、設計書が書けない、設計書がない設計審査?」という指摘には大きな衝撃を受けたことでしょう。がんじがらめのデザインレビュー・システムでは、「あれも、これも」と設計者に審査資料を準備させますが、当事務所のクライアント企業では必要なのは「設計書1本」です。 

 次に、「How」ですが、赤色の文字「技術者として、楽しく、興味が湧き、継続性を有するデザインレビュー・システムで運用する」に注目してください。楽しくなければ、継続しません。がんじがらめのデザインレビューでは、お通夜になるのは当たり前です。図1をもう一度見ると、デザインレビューをがんじがらめにする必要が見当たりません。