誰もスカウトしない日本人設計者とは

 第11回に掲載した衝撃的な例文とは以下の通りです(図1)。確かに、偏見的で衝撃的な記事ですね。

図1●誰もスカウトしない日本人設計者
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図1●誰もスカウトしない日本人設計者

 第11回のテーマ「技術論文を読みたいと思わせるコツ」の応用として、下線を付したセンテンスを、以下に抽出してみましょう。

[1]技術スカウトマン(という職業)
[2]約5年前以上から(日本の設計者はスカウトしない)
[3]日本人設計者は設計書が書けない(から)
[4]設計審査に臨めない
[5]過剰品質の商品群と低コスト化設計の遅延
[6](再教育の必要性と日本の設計力の)リベンジ

 冒頭で目くじらを立てた人も、ドキッとするセンテンスが並んでいるのではないでしょうか。

5N企業では設計者として成長できない

 筆者のコンサルタント仲間でささやかれているのが、「5N企業からは受注するな」です。図2を見てみましょう。

図2●驚愕の5N企業が存在する
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図2●驚愕の5N企業が存在する

 解説するのが嫌になるほど、がっかりの企業が存在します。このような企業に就職してしまった若手設計者は、真偽を判断するために同窓会や各種のセミナーに顔を出し、多くの情報を得る必要があると思います。ここでも、本コラムのコンセプトである「技術者のコミュニケーション」が重要ですね。

隣国の企業はどう見ているか

 2011年3月11日に発生した東日本大震災で筆者は仕事が減りました。セミナーやコンサルテーション業務が相次いでキャンセルされたり延期されたりしたためです。しかし、その月末に隣国企業から大量の注文が入り、命を救われました。

 かれこれ7年の付き合いの中で、この隣国企業は各国の、中でも特に日本企業の長所・短所を調査していることが判明しました。まず長所として、勤勉さや仲間意識が強いことなど数えきれないほど挙げられていました。そこは安心してください。一方、短所となると図3の通りです。ただし、日本企業の設計者に絞りました。

図3●隣国企業が分析した日本企業の弱点(設計者版)
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図3●隣国企業が分析した日本企業の弱点(設計者版)

 著者が技術スカウトマンから聞いた話では、「米国や欧州、韓国などの大企業に転職した日本人設計者は、(図3が原因で)ISO9001における必須のデザインレビューに臨めない」とのことでした。「デザインレビューという審査が通らない」ではなく、「臨めない」です。つまり、参加すらできないということです。

 少しだけ解説します。図4を見てみましょう。まず「1」ですが、世界の工業国の中で、日本人設計者だけが、「80±?」の「?」や「L±⊿L」が計算できません。その理由は簡単。教科書がないからです。教科書がないことに気付いた技術者が統計学や品質工学を持ってきますが、それは、コンビニエンスストアにサンドイッチを超高級車の「ロールスロイス」や自家用ヘリコプターで買いに行くようなものです。間違いではありませんが。

図4●公差計算の例題
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図4●公差計算の例題