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 次のような質問が私の事務所に寄せられました。

【質問12】
 「入社半年レビュー会」が開催されました。パワーポイントの色付けやアニメーション加工が得意な私は、同期との差異化を狙って、それらを駆使しました。ところが、全員の発表が終わった後、技術系役員からの総評で、「派手で下品な電光看板のようなプレゼンが1件あって、残念だった。もうそろそろ、学生気分は卒業してほしい」とのコメントがあり、仲間からクスクス笑われました。なぜ、色付けやアニメーション加工が企業ではご法度なのでしょうか? 教えてください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答12】
 パワーポイントの色付けや、やっと覚えたアニメーション機能を付加することは、非常に楽しいですよね。一方、「入社半年レビュー会」が開催されたとのこのですが、その「6W2H」を作成してみてください。そこに、パワーポイントの必要性が記述されても、その色付けやアニメーションが必要でしょうか。もう1度、「入社半年レビュー会」の目的を6W2Hで把握しましょう。

 本コラムの第2回で解説した「6W2H」を使って、「入社半年レビュー会」の意義を理解してみましょう。パワーポイントの作成に取り掛かると、あれもこれも伝えたくなり、本来の目的から逸脱してしまう場合があります。常に、6W2Hをパソコンの脇に置いて作業を進めてください。今回は、技術者向けのパワーポイント作成に関する「禁じ手」を解説しましょう。

禁じ手(その1):社内用語は3つが限度

 まずは、社内用語です。全社員が知っている単語かと思いきや、約半数以上の社員が理解していなかったということがあります。実は、当事務所のあるクライアント企業へのアンケート結果がそうでした。皆さんもそうしたケースに遭遇することがあるでしょう。例えば、以下のような機会においてです。

①技術成果発表大会
②昇進昇格論文とその面接試験
③社員研修の実習や社内での懇親会

 それでは早速、「禁じ手(その1)」の事例を図1で見てみましょう。

図1●禁じ手(その1)の事例:社内用語の乱発
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図1●禁じ手(その1)の事例:社内用語の乱発

 これは、大手精密機械企業に勤務する設計部長の文章です。社内用語満載の文章で、社内の他の部長や役員に見せたところ、全く理解できませんでした。この部長の所属部門でしか使用されていない用語だったため、他の部門では理解できないのです。どうしても、社内用語を使用しなくてはならない場合もあるでしょう。その場合、当事務所のクライアント企業に対して筆者は以下のルールを推奨しています。

①1つのプレゼンテーション資料内で、3箇所以下。
②1つの技術論文内で、3箇所以下。
③1面接内で、3箇所以下。
④ただし、その3箇所の全てに注釈を付ける。

禁じ手(その2):色オタクとアニメオタク

 米国で有名なビジネス誌が、パワーポイント弊害論を唱えてから筆者の周辺ではさまざまな現象を把握しました。

(1)日本の有名な自動車会社の1事業所がパワーポイントの使用を禁止した
(2)日本で有名なコンピュータ会社の1事業所がパワーポイントの使用を禁止した
(3)日本で有名な総合商社がパワーポイントの使用を禁止した
(4)日本で有名な大学の1学科が授業中のパワーポイントの使用を禁止した

 なんと、プレゼンのために使用されてきたパワーポイントの使用禁止令です。当事務所では、この原因を調査しました。その結果、パワーポイントというよりは、使う側に原因がありました。まず、前述(1)~(3)の企業ですが、パワーポイントに付随している色付け機能とアニメーション機能が有害だったのです。不要な色付けやアニメーションに、社員である作成者が、莫大な工数をかけていたのです。ムダな工数ですね。

 一方、学校関係では教員が次から次とへとパワーポイントをめくって授業を進めていました。最初は学生たちが必死にノートにメモを取っていましたが、授業開始から10分も経ったころには疲れ果て、ぼーっと聞いているか、居眠りをするかというパターンです。そこで、パワーポイントを廃止して板書、つまり、黒板に筆記する従来の授業に戻りました。パワーポイントは、複雑な図表を表示するときのみに使用しています。

 図2は、色オタク、およびアニメオタクによるパワーポイントの悪しき事例です。技術用プレゼン資料としての品格のなさやムダな業務であることが納得できると思います。

図2●パワーポイントの色オタクとアニメオタクの作品
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図2●パワーポイントの色オタクとアニメオタクの作品

パワーポイントの悪しき事例を動画で見る