デジカメに関する仕様の優先順位

 「なんだ、ポスタータイトル用のQFDか」と思うのは早急です。筆者の事務所のクライアント企業の1つにコンパクトデジタルカメラ(以下、デジカメ)のメーカーがありました。老舗のカメラメーカーですが、家電企業の進出でシェアは低下するばかり。筆者がこのカメラメーカーの企画書を診断したところ、その企業の得意とするカメラ技術を「これでもか!」と投入していました。結果、何の特徴もなく、「何でもあり」の重たくて分厚いデジカメの開発を目指していたのです。

 筆者はここからコンサルテーションに入りました。まずは、「設計思想とその優先順位」を探ることからスタートしました。ところが、「私はこう思う」「いや、僕はこうだ」と言い合うばかりで、いつまでも決まりません。そこで切り札として筆者が出したのが、図2に示す簡易QFD(ビジネスバージョン)です。

 この大きな特徴は、縦欄の指標にQ、C、D、その他に関する「重し付け」を加味したことです。例えば、「携帯性が良い」ことと「画質が良い」ことがQ、C、D、その他を加味したときに同等でよいかどうかの問題を解消できます。

図2●簡易QFDを使ったデジカメ企画の優先順位の決定
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図2●簡易QFDを使ったデジカメ企画の優先順位の決定

 この図から分かるデジカメの「設計思想とその優先順位」は以下の通りです。

①電源の種類(=電池にリチウムイオン2次電池を使用)
②軽いこと
③コンパクトであること
③ブレ防止機能があること(注:ここでは③が2つあります)

 上記①②③の順で「設計思想とその優先順位」が設定されました。素手で戦えない者は、「飛び道具」を使えば必ず勝てます。一方で各種の開発ツールに「これでもか!これでもか!」と100点満点を期待するケースが見られます。しかし、筆者は設計職人ですから、開発ツールには合格点の70点を期待して使用しています。これを筆者の事務所では「電卓レベルの開発ツール」と呼んでいます。開発ツールを「主役」にしてはいけません。開発ツールとは、常に「脇役」であるべきです。

 それでは、次回もお楽しみに。