3秒ルールでお通夜を避ける

 お通夜状態のデザインレビューを回避するもう1つの方法は、第4回で紹介した「3秒ルール」です。デザインレビューは「Q&A(質問と回答)」の繰り返し。質問側と回答側の歯車が噛み合って初めて円滑に進行していきます。堅苦しい審査なのに、相互に気持ちの良い感覚に浸ることができます。しかし、どちらか一方が「ダンマリ」を決め込めば、もうギクシャク感でいっぱいのドッチラケの状態に陥ってしまいます。その原因は、コミュニケーションスキルの欠如にあります。さらに突き詰めると、「3秒ルール」の違反です。人と人との円滑な会話やコミュニケーションは、「3秒以内」にQ&Aが繰り返されて成立するものだからです。

 ここで、図3を見てみましょう。図2とそっくりですが、図3の前方スクリーンは2画面となっています。これが「3秒ルール」をキープしてくれるのです。

 例えば、「先ほどの回路図に戻ってくれませんか?」とか、「どのページか忘れたけれど、製品断面を見たいのですが」といった言葉が上がったときに、パワーポイントの資料探しに時間がかかっていると、せっかくのリズミカルなQ&Aが阻害されてしまいます。こうした場合に、2画面があれば、1つの画面で先へ進みながら、もう1つの画面で仲間が必要な資料を探すことができます。このために必要な投資は、わずか10万円。私はクライアント企業に対し、必ず2画面によるデザインレビューを指導しています。

図3●私が指導している企業のデザインレビュー風景
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図3●私が指導している企業のデザインレビュー風景

新人技術者へのアドバイス

 デザインレビューにおいて、模範教師に値する先輩は「3秒ルール」をきちんと守り、ポンポンと心地よいQ&Aを行っていることに気が付いてください。なぜ、「3秒ルール」がキープできるかと言えば、答えは簡単。PDPCを実行しているからです。忘れた人は、第4回を復習してください。

 一方で、反面教師の先輩もよく観察しましょう。3秒ルール違反を連続して犯し、手元のある資料を焦りまくって探していませんか。そう、PDPCを怠ったからです。審査する側のいらだった表情が思い浮かびます。

 模範の先輩を探すこと。これが新入社員にとっての「即戦力」へのショートカットです。 つまり、アスリートや料理人と同じです。いつかは追いつき、追い抜くターゲットを定めることが大切。技術力の向上は、その後で十分です。

楽しくなければデザインレビューではない

 デザインレビューは、完璧を狙うほど「お通夜」になってしまうものです。デザインレビューは、技術者が楽しくなくてはなりません。がんじがらめのデザインレビュー・フォーマットや、がんじがらめのデザインレビューシステムでは、お通夜といじめの会になるだけです。デザインレビューでは100点満点を取るのではなく、合格点である70点をとればよいのです。