國井 良昌=國井技術士設計事務所 所長
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國井 良昌=國井技術士設計事務所 所長
 次のような質問が私の事務所に寄せられました。

【質問8】
 國井先生、助言をください! 当社のデザインレビューは最近、「お通夜」、もしくは「いじめの会」のようになってしまいます。ですから、「来週の金曜日はデザインレビューを開催します」と聞くと、もう憂鬱な毎日です。仲間も胃痛や頭痛を訴えています。どうしたら有意義なデザインレビューに戻すことができるでしょうか。ご指導をお願いします。 

【回答8】
 デザインレビューは、品質システムに関する国際規格「ISO9001」で必須となっています。ところが、次の3つのパターンになりがちです。
①全く実施していない
②発言なき無言の「お通夜」状態
③「いじめの会」に変貌
 このうち、①は論外です。従って、今回は②と③を解説しましょう。

 デザインレビューのテーマに関して、「技術者塾」の講座「國井設計塾」では管理職を中心に有意義で効率的なデザインレビューの進め方を指導しています。一方、本コラムは、「國井設計塾予備校」ですから、デザインレビューを円滑に進めるために、技術者としての基礎知識や参加条件などを伝授します。そして、ここでも「技術者向けコミュニケーション」が基本になります。

デザインレビューとは

 デザインレビューについて、日本企業では「デザインレビュー」と「DR」、「設計審査」の3つの呼び方があります。デザインレビューと設計審査は異なるという学者がいるそうですが、筆者のような「設計職人」に言わせると、これら3つは呼び方が違うだけで中身は全て同じです。従って、以降は3つの単語が混在することをご了承ください。

 では、図1を見てください。食品も衣料も工業製品も、図中の左から右へと進むプロセスを経て商品が開発されていきます。この中で、デザインレビュー(設計審査)はほぼ中央に位置しています。その前段に「設計書(の範疇)」とあるのが分かりますか。この設計書を審査するのがデザインレビュー、つまり、設計書の審査「設計審査」です。

  逆に、設計書がなければ設計審査はできません。設計書のない企業の設計審査は、ただの技術説明会になってしまいます。それは議事録を見れば分かります。「承認」しかないからです。単なる説明会で審査しない。だから、「却下」も「再審査」もないのです。

図1●設計プロセスにおけるデザインレビュー(設計審査)の位置
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図1●設計プロセスにおけるデザインレビュー(設計審査)の位置

 新人技術者であっても、半年や1年もすれば社内のデザインレビューに参加する機会があると思います。審査される側ではなく、教育を兼ねたオブザーバーとしての参加が多いのではないでしょうか。参加したことがないという人でも、社内でデザインレビューの噂は聞いているのではありませんか。そこで質問です。あなたの会社のデザインレビューの雰囲気はどのような感じでしょうか。誰もが無言の「お通夜」状態ですか。それとも、上司からの「いじめの会」のようですか。

 実はこれら2つが、多くの日本企業が長年患っているデザインレビューの“病状”です。残念ですね。しかし、意外と簡単に改善できるのです。