図表が主役

 まず、[3]の対策を説明しましょう。論文やパワーポイントに関して、技術者の多くが間違っていることは何でしょうか? それは、技術者にとって大事な宝ものである図表やデータを全く使用していないパワーポイントを作成していることや、図表やデータを使用したとしても、説明文の隙間を埋めるためだけになっていることです。これらの論文やパワーポイントは、まるで口だけ立派な評論家のようです。

 「技術者のプレゼン資料や技術論文には、技術者にふさわしい図表を挿入することが肝要である」。はい、このアドバイスは大きな誤りです。どこが誤りなのかと言うと、「図表を挿入する」の部分です。実は、技術者のプレゼンや技術論文のコツとは、埋め草として図表を挿入しておくのではなく、「図表ありきで、図表について説明していく」ことが「肝」なのです。

 つまり、主役は図表であり、後から挿入するものではありません。これが、最大の特徴です。もう少し具体的に解説しましょう。図1は前回のコラムでも紹介した「パワーポイントの設計」です。この図の右端(「パワポの枚数」の欄)に、図表に関して「技術課題で1枚、対策で2枚、効果で1枚」と記述しました。つまり、合計4枚です。

 主役となる図表は4枚ですから、あなたの得意な、もしくは主張したい自慢の図表の候補を8枚、少なくとも6枚は用意してください。それを机上に置き、頭の中でシナリオを描きながら「最適な4枚」を選択します。その図表4枚に関する解説書が技術者のプレゼン資料であり、技術論文となるのです。ここはぜひ、押さえておきたい技術者のノウハウです。

図1●パワーポイントの設計
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図1●パワーポイントの設計