6個のコミュニケーション道具

 いくつかの企業では、管理職から営業系、総務部や調達部まで含めたコミュニケーション研修に、技術者も一緒くたにした安易な研修が行われています。「傾聴力」などというタイトルの座学を挟んだ実習が盛り込まれ、ペアで向き合って相手の話を傾聴したりします。私も現役中に強制的に参加させられましたが、何の印象も残っていません。私は本来、傾聴力は部門を問わず、コミュニケーション能力の基本であると信じています。しかし、技術者には傾聴力だけではない別のコミュニケーション能力も必要なのです。

 データをもって相手を説得する技術者には、画一的なコミュニケーション能力だけでは目的を達成できません。技術者には技術者向けのコミュニケーション能力が必要なのです。

 そのためには、図2に示す6個のコミュニケーション道具が必要です。こうした道具を使いこなす。これが、「正しく、技術者らしいコミュニケーション」のあるべき姿でしょう。

図2●技術者向けコミュニケーション能力を向上させる道具
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図2●技術者向けコミュニケーション能力を向上させる道具

 コミュニケーションは、1人では成立しませんし、無機質な物体相手でも成り立ちません。人という相手あってのコミュニケーションです。実は、新入社員だけではなく、環境に慣れきったはずの指導者(上司)であってもコミュニケーションが苦手な人は少なくありません。

 次回は図2に記載した道具の1つひとつを解説していきます。新入社員や上司の方々もご期待ください。