1対1、1対多数の面談(面接)を上手にこなす手順

[1]入室と同時にキーパーソンを探す。1対多数の場合は、中央に座っている人がキーパーソン。相手が2人の場合は、入り口から奥の座席にいるのがキーパーソンである。

[2]立ったまま、キーパーソンに対してラポール(注:説明や交渉を行う前に、相手と共有できる話題を見つけて本題以外の会話を行うこと)をとります。例えば、「こんにちは!」とキーパーソンだけにラポールをとればよい。従って、「皆さん、こんにちは!」のような「皆さん」という言葉は不要。ここは押さえるべきポイントである。

[3]キーパーソンと目線を合わせる。これは大変恥ずかしくもあり、気まずいため、相手のネクタイの結び目に目線を持ってくること。相手が女性の場合でも同様に対応する。

[4]面談(面接)の場合、着席したら相手が第一声を発するので待つ身となる。一方、謝罪の場合は、あなたが第一声を発する。このとき、2回目のラポールを得るチャンスでもある。

[5]後は、第2回コラムで解説した「6W2H」や、第4回コラムで解説した「PDPC法」を駆使し、想定質問を準備しておく。

 さて、[4]で謝罪の場合は、あなたが第一声を切る。このとき「2回目のラポールを得るチャンス」との記載がありますが、このときのラポールとは一体何でしょうか。謝罪なので、まさか、大阪風の「もうかってまっか?」では気まずいですし、当日のその場では決して出てこない台詞(せりふ)です。従って、ここでも、6W2HやPDPC法を駆使し、事前に準備しておきましょう。

補足
・6W2H:本コラムの第2回、「技術者が説明や打ち合わせをうまく行うには?」を復習しましょう。
・PDPC法:本コラムの第4回、「彼女いない歴32年を克服しよう」を復習しましょう。

 それでは、質問者である糊月(のりつき)君と、部長の安全(あんぜん)さんに登場していただきます。

 糊月君は接着剤のメーカーに勤務する研究員で、安全さんは自動車会社T社の品質管理部長です。接着剥がれのトラブルが生じ、その接着剤を開発した研究員の糊月君と営業マンが、安全さんの部門へ謝罪と今後の対応に関して面談に出向きました。

(入室と同時にキーパーソンを探す。中央に座る安全さんがキーパーソンと推定)
(安全さんにアイコンコンタクトをとる)

糊月君:「こんにちは! 大変ご迷惑をお掛けしています(←これが第1回目のラポール)。株式会社ADOの研究員、糊月と申します」

安全さん:「やあ、遠路すみません。部長の安全です。まあ、そこに座ってください」

(キーパーソンである安全さんのネクタイの結び目に目線を置く)

糊月君:「改めまして。ご迷惑をお掛けしております。株式会社ADOの研究員の糊月と申します。実は、今回のトラブルはT社様と同業のH社様でも発生しており、原因は、当社側にあると推定しております」(←ここが第2回目のラポールです)

安全さん:「そうだろ、そうだろ!」(なぜか、いきなりご機嫌になった安全さん)

 前述の第2回目のラポールに関してですが、もちろん、技術者故に捏造や虚実、お世辞は禁物ですが、「同業のH社もトラブル」というセンテンスで、安全さん側と糊月君の全員にラポールがとれたことになります。