面接試験はラポールで始まりラポールで終わる

 筆者はある国家試験の試験問題作成と面接試験官を請け負っています。後者の面接時に、何度か不器用な受験者に遭遇します。

 再び、糊月君と安全さんに再現してもらいましょう。

安全さん:「この化合物は、Aを触媒として使用するときにのみ生成する化合物ということですか?」
糊月君:「そんなことは言っていません。全く違いますよ。もう一度説明しますが…」

 試験官役の安全さんは、受験者の回答にラポールを求めています。にもかかわらず、糊月君はそれを外してしまいました。せっかくのチャンスを自ら破棄してしまったのです。残念な事例です。面接は、あなたのためにあるのではなく、「試験官のための面接試験」であるという基本が欠如しています。

 それでは、次の事例はどうでしょうか?

安全さん:「この化合物は、Aを触媒として使用するときにのみ生成する化合物ということですか?」
糊月君:「申し訳ありません。私の説明が悪かったようです。実は…」

 あるいは、次にように回答します。

糊月君:「概ねその通りです。しかし、一箇所だけは…」

 試験官役の安全さんは、受験者の回答にラポールを求めています。それに対し、受験生の糊月君もラポールで返そうと気遣っています。

 先に「試験官のための面接試験」と解説しましたが、その意味を理解できましたか。「試験官のための面接試験」とは、あなたが面接試験官だったらどう思うか、立場を逆にして、または相手の立場で考えてみようという意味です。

 では、次回をお楽しみに。