創業者の熱意を見よ

 ただし、スケーラブルな事業を手掛けているからといって、そのベンチャーが大きく成長するとは限らない。創業者の熱意や能力などに左右されるからだ。中でも、尊敬に値する創業者であるかどうかということが、ベンチャーの成否を占う上で、非常に重要だ。創業者たる者、知識やスキルが抱負で、情熱があり、献身的な姿勢で仕事に臨んでこそ、従業員や投資家、顧客から尊敬を得られる。

 優秀で熱意がある創業者ほど、自分の経歴や考え方をオープンにする傾向が強い。彼らは会社のWebサイトに写真や詳細なプロフィールを載せている。
 それは、時間の節約のためである。優秀な起業家ほど、人と会う。昼食や夕食の時間にまで、従業員や求職者とよく話し合う。だから時間がない。そこで、自分が信用に足る人間かどうかを、求職者や投資家などに知ってもらうために、自分のプロフィールや考えを公開しているのである。

 実際、Bill Gates氏やSteve Jobs氏という著名な起業家は、有名人のようにテレビや講演会に出るよりも、むしろ従業員との時間を大切にして製品の詳細まで注目していた。それこそが、事業内容を深く理解し、正しい決断を下す近道だと知っていたからだ。

 ベンチャーへの就職を考えている人は、まずはWebサイトに公開されている創業者のバックグランドを読んで、「この人物はなぜ今この事業を展開しているのか」、という部分に着目すべきである。この点が明確ではない起業家は、注意した方がいい。そういった起業家の多くは、単に名声や富のために流行を追うだけで、流行が変わると、事業方針をコロコロと変更するからだ。それはあたかも、風向きが変われば進む方向が変わる帆船のようである。

 そういう創業者が手掛ける製品やサービスは、自社の専門技術や経験とは関係なく、単に流行りものに手を出すだけで、将来を見据えたビジョンが乏しい。長期的な視点で事業計画を立てて、1つひとつハードルを超えて成功をつかむ、という姿勢からはほど遠い。

 一方で、潜在力を秘めた起業家というのは、特定の新製品の開発や、市場開拓に純粋な熱意を持って挑んでいる。こうした起業家に出資した投資家や集まった従業員、付いた顧客は、その熱意にほだされて協力し合っている人たちである。