シリコンバレーには、起業家ばかりがいる。そんな印象を持っている人がいるかもしれない。だが、実際はほとんどいない。むしろ、ベンチャー企業に勤める人の方がずっと多い。ベンチャーで働くことは、創業するよりもはるかにストレスが小さく、リスクも小さい。しかも、とても刺激的で大きな糧となる経験を積める上、多額の報酬を得るチャンスもある。そこで今回は、「被雇用者」として、良いベンチャーをどのようにして見極めればいいのか、そのポイントを解説したい。

なぜ、ベンチャーで働くのか

 ベンチャー企業の職場環境を知りたければ、ベンチャーの従業員を誘い、飲みに行けばいい。そして一杯目のビールを飲み干したところで、こう質問すればいい。「1、2年でつぶれそうな創業間もないベンチャーでなぜ、働くのか」と。

 そんなことを聞くのは、気が引けるという人もいるだろう。だが、その心配はいらない。彼らは、「安定した大企業で働くよりもベンチャーでの仕事が好き」だと、誇らしげに語ってくれるはずだ。

 ベンチャーと大企業の大きな違いは、マニュアルや定型的なトレーニングというものが存在しないことである。ベンチャーにはマニュアルを書いたり、トレーニングを行ったりするお金も時間もない。入社初日から、誰もが最前線でバリバリと働かなくてはならない。すべてが新しいからこそ、前例や規則がない。新たな問題が生じれば、すぐに新しい方法や規則で解決を試みる。うまくいかなければ、また新しい方法で挑戦する。その繰り返しだ。

 こうしたワークスタイルを、ストレスが大きく、大変だと感じる人もいれば、魅力を感じる人もいる。それは個人の性格次第である。ただ、ベンチャーで働くことは大きな経験になることは確かである。新製品の作り方や新しい従業員の雇い方、投資家とのやり取りなど、ビジネス書やセミナーでは決して得られないノウハウを蓄えられる。

 特に、創業間もないベンチャーほど、得難い経験を積めるし、自分が創業するときに、それが大きな糧になる。例えば、米Amazon.com社を創業したJeff Bezos氏は大学を卒業した直後にあるベンチャーに勤めて、そこで学んだ経験を、同社の設立に大いに生かしたと聞く。