モビリティー革命による社会変化は、自動車産業の各プレーヤーにも影響を与える。第5回では乗用車業界、第6回ではその影響が真っ先に変化として現れる商用車業界について取り上げた。今回は部品産業に与える影響を考える。

変わる「物」と「戦い方」

 自動車産業は、完成車メーカーを頂点とする大小の部品メーカー(サプライヤー)がピラミッド型に連なる産業構造である。自動車部品を製造するサプライヤーは、世界で数十万社存在する。この産業としての「裾野の広さ」が、これまで世界中で膨大な雇用と経済的な利点をもたらしてきた。実際、多くの新興国が一次産業頼みの経済構造から脱却し、工業化を推進するためのドライバーとして、自動車産業の誘致・育成を目指している。

 日本においても、完成車メーカーが作り上げてきた系列型の生態系の中で、多数のサプライヤーが日本経済の牽引役を担ってきた。現在、サプライヤーのグローバル売上トップ100社には、日系企業が37社ランクインしている。

 これまで本連載で取り上げてきた「パワートレーンの多様化」、「クルマの知能化・IoT化」、「シェアリングサービス」によるモビリティー革命は、部品産業、及びサプライヤーにどのような変化をもたらすのか。その中で、どのようなサプライヤーが勝ち残るのか。今回は部品産業に焦点を当てて、モビリティー革命後の姿を考察する。

 初めに、モビリティー革命による自動車の構造自体の変化に触れておきたい。「パワートレーンの多様化」に伴い、特に電動化が広がることで、主にエンジン・エンジン補機、吸排気、燃料装置といった領域は、モーターや電池に置き換わる。また「クルマの知能化・IoT化」に伴い、駆動・足回り領域はバイワイヤーやインホイールモーターなどに代替されると考えられる(図1)。言うまでもないが、これらの部品領域を扱うサプライヤーにとって「消えゆく部品」は脅威であり、「新たな部品」は機会となる。

図1 電動化・知能化により消えゆく部品・新たな部品
図1 電動化・知能化により消えゆく部品・新たな部品
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 それでは、モビリティー革命は自動車部品のプレーヤー構造にどのような影響を与えるのか。参考にしたいのは、携帯電話業界の事例である。急速な市場の拡大や技術革新により、完成品メーカーの顔ぶれは大きく変わった。これに対して日系部品メーカーは、日系完成品メーカーが存在感を落とす中でも海外売上比率を伸ばし、収益も堅調に推移している(図2)。携帯電話業界をアナロジーと捉えると、完成車領域に大きな変化があったからと言って、部品メーカーの顔ぶれが変わるわけではない。つまり、日系部品産業の盛衰を、完成車領域における日系勢の盛衰とイコールと捉えるべきではないだろう。

図2 スマートフォンメーカーのシェアと業績の変化
図2 スマートフォンメーカーのシェアと業績の変化
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