鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
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鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
 グローバルシェアを取るために訴求すべき「技術的付加価値」と「非技術的付加価値」。その比率は製品によって異なるものでしょうか。

 一般に、「iPhone」のような「B to C」商品の場合、技術がコモディティ化した後は後者(非技術的付加価値)の比率が高くなる傾向があると思われます。では、ガラス・金属といった素材や電子材料などの「B to B」製品の場合はどうでしょうか。これらの製品は、現在でも前者(技術的付加価値)の比率が高いというのが筆者の実感です。

 ここで、「技術のコモディティ化=非技術的付加価値に移行」という公式が正しいとします。すると、こうしたB to B製品には技術スペックに関して日々新しいニーズが生まれており、そもそもコモディティ化しないから、非技術的付加価値に移行せずに技術的付加価値での勝負が続くのではないか、という仮説が成り立ちます。

 例えば、ガラスを例に考えてみましょう。透明性や素材としての強度(硬さ)といった特徴は既に備えています。そこで、現行のガラスにはない導電性などの機能や、現行の泣き所である耐衝撃性といった特性を改善することが技術課題となっているようです。これらの技術課題(=新しいニーズ)の存在は、技術進歩の余地を意味します。言い換えるならば、技術のコモディティ化が進展していない、ということになります。

 もっとも、導電性や耐衝撃性といった特殊な性能を備えたガラスほどその用途は限定的になり、いわゆる「ニッチ市場」へ対応する製品となります。そのため、グローバルシェアの回復とは関係がないかもしれません。他方、大量生産されていて、ごく一般的な用途に使われている汎用ガラスは、グローバルシェアに影響を及ぼします。しかし、こちらは既にコモディティ化しており、もはや技術的付加価値による勝負はできない状態にあると考えられます。この場合、B to B製品であるガラスにも、「技術のコモディティ化=非技術的付加価値に移行」という公式が当てはまることになります。

 ということは、どのような非技術的付加価値で勝負すればよいのか、という点が論じるべきテーマになります。