鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
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鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
 「オープン&クローズ」という言葉が製造業の世界で流行っています。しかし、実は意味がよく分からないと思っている人はいませんか。あるいは、「オープンは特許出願、クローズはブラックボックス化だろう?」と思っている人もいると思います。今回は「オープン&クローズ」の本来の意味を説いていきたいと思います。

 私も「オープン&クローズ」というのは非常に分かりにくい言葉だと思っていました。なぜ分からないのか考えてみたところ、実はオープンとクローズには、それぞれ2つのレベルがあり、それ故に異なる意味を持つからだということが分かりました。

 特許実務上で「オープン」/「クローズ」というと、特許出願をすればオープン、特許出願をせずにブラックボックス化すればクローズという冒頭に示した理解になります。しかし、事業戦略上で「オープン」/「クローズ」というと、第三者にライセンスなどを行い、いわゆる技術を広く普及させるのが「オープン」、逆に第三者に実施させずに「私」だけが実施できるのが「クローズ」という、上記とは全く異なる意味になります。つまり、同じ「オープン&クローズ」でも、特許実務と事業戦略でそれぞれ2つの意味があることになります()。

表●「オープン」「クローズ」のダブルスタンダード
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表●「オープン」「クローズ」のダブルスタンダード

 この表のように分けて説明すると、意味を理解することは特に難しくありません。しかし、「オープン&クローズ」を議論する人が、「私は第1の意味でオープンという言葉を使っています」とか、「ここから私は第2の意味でクローズという言葉を使いますよ」とは言わずに、「オープン」と「クローズ」という用語を使っていることが珍しくありません。そのために分かりにくくなっている文献が多いと感じます。結果、「オープン&クローズはよく分からない」ということになってしまうというわけです。