鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
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鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士

 「自力」での市場開拓のために必要なマーケットが、①’ 「自社の技術力でアプローチ可能で、必須特許を取得可能なマーケット」であるとすると、後段にかかる「必須特許を取得可能なマーケット」をどのように探索・発見するのかが問題となります。

 特許分析チャートを参照し、この考え方を応用してみましょう。

 このチャートは、縦軸に「素子」、横軸に「機能」をプロットし、それぞれの特許件数(Z軸)を描いたものです。見て分かる通り、「素子D」については多くの特許が出願されています。これは、素子Dに各社が積極的に開発投資している事実を示していると考えてよいと思います。恐らく、素子Dには大きな規模の市場があるのでしょう。しかし、中小企業の立場から考えると、市場規模の魅力にひかれてはいけません。大きな市場に参入すれば必ず大企業との競争が生じ、最終的には体力勝負になるからです。

図●特許分析チャート。特許庁ホームページから引用(http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/kikai04/map/map6.htm)
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図●特許分析チャート。特許庁ホームページから引用(http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/kikai04/map/map6.htm)

 不利な体力勝負に陥らないための1つのカギは、必須特許の取得だといわれています。しかし、「素子Dに多くの特許が出願されている=素子Dに開発投資をしても広い権利を有する特許権(=必須特許)の取得は難しい」という関係が成立します。つまり、素子Dへの開発投資をしても、必須特許取得は難しい。市場参入できないか、参入してもやがて撤退、という結論が、必須特許ポートフォリオ論から見えてくるのです。