鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
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 内閣総理大臣の安倍晋三氏が打ち出した経済政策「アベノミクス」の下、「地方創生」を実現する主体として、我が国は中小・ベンチャー企業に焦点を当て始めています。ここで、筆者は地方創生を次のように捉えています。地方創生とは、「地方」の競争力を再発見した上で活用し、都市部のみならず日本全体を活性化する。これにより、日本全体で雇用創出や税収の確保を図っていく動きのことだと。この点について、我が国の戦略指針を定める「日本再興戦略2015」という文書では、総論において以下のように論じられました。

──「地方の活性化なくして、国全体の成長はなく、アベノミクスの成功もない。どの地方も、まだまだ使われていない地域資源を豊富に保有しているにもかかわらず、その潜在力を活かし切っていないことは疑いようのない事実である。ただし、従来のやり方の延長線上や他力本願の姿勢の上に答えはなく、今こそ『地方自らが自分の将来を決める』ための『行動を起こす時』なのである。」

地方創生は観光や福祉、教育などあらゆる分野のスローガン的なキーワードですが、地方に存するものづくりや匠の技も地方創生の一分野であることは論を待ちません。この点について、日本再興戦略2015は「中堅・中小企業・小規模事業者の『稼ぐ力』の徹底強化」という各論において、以下のように論じています。

──「これまで地域経済を支えてきたのは、中堅・中小企業・小規模事業者である。地域に根ざし、雇用の受け皿を提供してきた。しかしながら、これらの事業者にも変革の大波が押し寄せている。地域に根ざした事業者であればあるほど、人口減少・少子高齢化による需要の減少と人手不足により、需給両面からそもそもの存立基盤が脅かされつつある。大企業の国際競争激化のあおりも大きく、大企業と下請という従来の系列取引関係等も崩れつつある。ポイントは、『自力』での市場開拓への挑戦である。
(注:文字強調は筆者)

 つまり、日本再興戦略2015は、地方創生の主体が「中堅・中小企業」などであることを認めつつも、これまでのような大企業への下請依存のままでは立ち行かないから自力で市場開拓をせよ、と明確に述べているのです。何を意味しているのでしょうか。それは「自社製品を立ち上げることによって、下請脱却を図ろう」ということです。だからこそ今、知財戦略が必要なのです。

 少々文脈が飛びました。もう少し分かりやすく解説しましょう。