根岸 幼い頃、いろいろなことに妙な関心を持っていましたね。今でも覚えていることがあります。満州にいた5、6歳の頃、私はギョーザが好きで、よく中華料理店に行ったんですよ。その厨房で、料理人がラーメンの麺を作っていたんです。その麺作りが面白かった。私はずっと見ていました。日本の場合は広げた生地を包丁で切りますね。満州ではこねた生地をたたきながら伸ばしていた。
山口 そうめん作りみたいな感じでしょうか。
根岸 はい、そうなんです。伸びたら、それを2つに折って、また伸ばす。どこがすごいと思ったのかというと、さっきまで確か1本だったのに、うっかりよそ見しているうちに100本以上になっている(笑)。あと3回も繰り返せば1000本の麺ができちゃうんですね。
山口 倍々ですからね。
根岸 不思議だな、と。その中華料理店に行ったときは、ギョーザを食べるよりも、それをずっと見ているのが好きでした。後から振り返って考えてみると、何か変わった小僧ですね。でも明らかにあのときに私は2のべき乗を学んだ(笑)。
頭の良さと創造性
山口 科学あるいは学問について日本人の特性をどうご覧になりますか。
根岸 極端に言えば日本人は頭が良い。だけどクリエーティビティーの点でね。
山口 そこは大事ですね。クリエーティビティーが少ない?
根岸 少ないとは言い切れないと思いますけど、でもやっぱり「右へ倣え」をさせられる集団かもしれません。
山口 それはどういうところでお感じになりますか。