山口 1年のうち364日が実験。私は「ブルドーザーみたいに」と表現しましたが、皆さんそうおっしゃっていますね。
天野 別にそんなにガリガリやっているつもりはなくて、楽しかったです。
天野 ところが、例えば原料ガスの流量を変えると、その1つひとつの結晶形が変わったり、あるいは不純物ドーピングも、亜鉛を入れたらすごくきれいな紫色から青色に色が変わったりと、いろいろ変えられるのを見るのは楽しかったですね。
山口 結局、何の成果も得られないまま、惨憺たる思いで修士論文を出すんですね。
天野 確かに修士論文は15ページぐらいしか書けず、出したのが2月ぐらい。就職が決まった同級生は卒業旅行で海外です。私は残って実験をずっとしていました(笑)。
切羽詰まって突き抜けた
山口 バッファー層を導入してみようと思ったきっかけは何ですか。
天野 きっかけは当時、助教授だった澤木宣彦先生から伺った話です。以前、名古屋大学で助教授をされていた西永頌先生(東京大学名誉教授)がシリコン基板の上にリン化ホウ素を成長させるとき、「直接ではなく、最初にリンを少し先流しすると表面がきれいになるよ」と話されていたと聞いたのです。それで低温で窒化アルミニウムをバッファー層として付けてみようと思って。だから決してひらめきとかじゃなくて、皆さんに教えていただいたことを応用したというか、少し使わせていただいたんですね。