伝説的なスポーツ選手の技能を、いかに次世代に継承するか――。

 これは、スポーツ界の活性化に関わる大きなテーマの1つです。例えば、サッカーのカズさん、野球のイチローさん、スキージャンプの葛西紀明さん、柔道の井上康生さん、バレーボールの竹下佳江さん、陸上競技の為末大さんなど、その雄姿を誰もが頭に思い描ける“レジェンド”のトレーニング手法や、試合中の判断といった知見は、スポーツに携わる多くの人のパフォーマンス向上に役立つでしょう。

 しかしトップアスリートであるほど、そのノウハウを他者が知る機会は少ない。加えて、素晴らしい能力を持ち、数々の成果を残してきた選手でも、自身のノウハウを言語化することについては不器用な方が多いように思います。このジレンマを乗り越えて、未来へ架け橋を渡すことはできないのでしょうか。

 ここに希望をもたらすのが、AI(人工知能)の存在です。トップアスリートの知見や思考回路を、AIを用いた「汎用知」として扱うことができれば、彼らに直接会えなくても、AIとの対話からパフォーマンス向上のための気づきを得られます。それを基にチームの戦術を練ったり、個人が練習メニューを組み立てたりするなど、活用の可能性は様々です。トップチームでの戦略策定から、中学生や高校生の部活動、クラブチームの強化、スポーツを始めたばかりの子どもの指導に至るまで、幅広い展開が見込まれます。

レジェンドの持つ経験や知見はAIを用いて「汎用知」となり、次世代のパフォーマンス向上につながっていく。(図:LIGHTz)
レジェンドの持つ経験や知見はAIを用いて「汎用知」となり、次世代のパフォーマンス向上につながっていく。(図:LIGHTz)
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