BOM/BOPの履歴管理が重要な理由

 現在、ものづくりの重要課題となっているのがグローバル生産の増加による管理の複雑化、製品の多品種化、コンプライアンス・トレーサビリティー(組み込みソフトウエア、含有化学物質管理を含む)の確保である。本連載第6回「部品番号の見直しが必要な理由」において、これらへの対策が必要であることを提言した。その方策として、前回(第8回)では部品番号(以下、品番と呼ぶ)のあり方、特に生産条件の情報を品番に持たせる考え方を解説した。

 ここで考慮しなければならないのが、製品は開発が一段落して発売された後も、機能向上や設計上のコスト削減、製造工程の改善などで常に変化することである。製品構成や製造工程を表現するBOM/BOPはそれに合わせて変更が加わることになる。

 特に、組み込みソフトウエアは短時間で修正や入れ替えができるので、その頻度はハードウエア部品より高い。しかも、製品を外観から見ても、どのバージョンや状態のソフトが使われているか分かりにくいという特徴がある。

 仮に製品に不具合が発生した場合には、生産工場、生産ロット、生産条件(4M)、それに対応する設計情報、組み込まれたソフトウエア・バージョンなどを時間軸で追跡する必要がある。製品の品種が多様化し、グローバル生産によって拠点ごとにさまざまな生産条件の差異が生じ、さらに頻繁な設計変更が発生する環境下で、不具合など技術的な問題が発生した場合の原因特定には複雑な手続きや処理が必要になる。履歴管理の高度化がさらに重要性を増しているといってよいだろう。

 品番に生産条件の情報を持たせることで、設計仕様と生産条件を合わせて示すことができるが、それは一時点での静的な状態を表すことに相当する。BOM/BOPの履歴管理を適用すれば、設計情報や生産条件の変化について動的な管理が可能である。今回はBOMの履歴管理に関する基本的な知識について、次回は応用的な活用方法について解説する。