前回まで、グローバル化による複数拠点での生産などに伴う、部品番号(以下品番)見直しの必要性と、その具体的な方法について見てきた。今回は、新品番への移行方法について説明する。これは、筆者がコンサルタントとして、非常によく受ける質問(FAQ)である。

 新品番への移行プロセスには大変大きい労力を伴う。投資対効果や移行計画など、十分な準備と、関連部門の合意形成を図っておく必要がある。新品番への移行方式には、大きく分けて、3種類ある。

[1]一括移行

 新BOMシステムやERPを導入する場合に、レガシーデータ(過去のBOMデータ資産)を新品番に一括変換し、格納する方式である。旧品番は、その後の運用リスクを低減するために「属性」項目として移行し、過去資産との整合確認や、部品調達など必要な場面で活用する。

 新品番への移行について関心を持つ企業のほとんどは、この一括移行方式を想定しているように感じる。なぜなら、図面中に記載された情報の変換も含めて、旧品番から新品番への変換のテクノロジーに質問が集中するからだ。確かに、旧品番から新品番に一括移行することは、一夜にして新しいパラダイムに変革することができ、理想的である。

 しかし、グローバル生産が一般的になった現代では、品番体系の変更は1つの設計・生産拠点に留まる事象ではなく、海外を含む複数の生産拠点で同時に達成するべきである。とすると、この移行プロセスは、新品番を記載した図面やBOMを各生産拠点に配信する“出図”という概念で捉えることが妥当であろう(図1)。“出図”により、新品番に書き換えられた図面やBOMを生産部門が受領することで、設計側と生産側の両方が整合した状態で新品番に置き換える、という考え方である。

図1 旧品番から新品番へのデータ移行イメージ
図1 旧品番から新品番へのデータ移行イメージ
[画像のクリックで拡大表示]

 そう考えると、一括移行とは、歴史ある企業の数十年分の設計資産を一括で出図するのと等しい行為になる。つまり、瞬間的な負荷が極めて高い方式であることが理解できよう。