リコール発生原因分析

 前回、全世界規模のメガリコールについての課題を提起した。この課題は、自動車産業各社にとって緊急のテーマである。

 図1は、平成27年に国土交通省が発表したリコール発生原因の分析結果(「平成25年度リコール届出内容の分析結果について」の21ページ)を元にして筆者が作成したものである。この資料は、リコール原因の割合と増減傾向を示す貴重なものだ。

図1 リコール発生原因と割合(平成24年度と平成25年度の比較)
図1 リコール発生原因と割合・2013(平成25)年度と2012(平成24)年度の比較)
国土交通省自動車局「平成25年度リコール届出内容の分析結果について」(2015年3月)を元に筆者作成。
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 件数として最も多い項目は、設計の「評価基準の甘さ」である。これはいわゆるデザインレビューの品質に関連する項目であるが、前年度比16%減少した。筆者が作成した図では、平成24年度と25年度の数値のみを掲載したが、元資料には5カ年平均の数値も示されている。この数値と比較しても改善傾向であることは同じだ。デザインレビューの強化が進行していることが読み取れる。

 2番目に多い原因は、「製造工程不適切」である。これは製造工程管理の品質に関連する項目であるが、前年比3%以上増加した。元資料に示された5か年平均値は14.3%であるので、これと比較すると6%近い上昇である。グローバル生産が増加し、製造工程管理の複雑性、難易度が増加したことが要因だと考えられる。

 「部品、材料の特性不十分」「使用環境条件の甘さ」も前年比3%以上増加した。グローバル調達や販売が増加することで、部品のスペックに余裕がなくなったり、想定外の利用条件が増えたりしたことが原因であろう。

 「プログラムミス」についても増加している。組み込みソフトウエアの規模の増大に起因するものであり、言うまでもなく自動車業界の課題である。

 本コラムはBOM/BOPの活用術の解説を目的としているので、この後、「作業工程」「製造工程不適切」に絞って考察を進めていきたい。