マツダが出展した「魁Concept」(写真:マツダ)
マツダが出展した「魁Concept」(写真:マツダ)

 いささか旧聞に属するようになってしまったが、11月5日に閉幕した「第45回東京モーターショー2017」で最も注目を集めたコンセプトカーの一つがマツダの「魁Concept」だろう。このコンセプトカーは、マツダの次世代デザインの方向性を示すモデルというだけでなく、マツダの次世代「SKYACTIV」技術を盛り込んだモデルでもあるからだ。

 次世代SKYACTIV技術の中核を成す新型エンジン「SKYACTIV-X」についてはこのコラムの過去の記事「2019年に始まるマツダの次世代『SKYACTIV』」で概要を紹介しているが、今回のモーターショーではSKYACIV-Xエンジンの実物が初めて一般に公開されるとともに、その詳細も明らかにされたので、前回の「謎解き」も含めて、その内容を紹介していこう。

燃費もトルクも向上

 SKYACTIV-Xは、この「2019年に始まるマツダの次世代『SKYACTIV』」でも触れたように、いわゆる「HCCI (Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火)」エンジンの一種だ。通常のガソリンエンジンのように、ガソリンと空気が混ざった「混合気」に点火プラグで火をつけるのではなく、ピストンが上昇して混合気を圧縮し、圧縮に伴う温度上昇によって混合気に火をつけるのが特徴である。ディーゼルエンジンもこの圧縮着火によって混合気に火をつけているのだが、ガソリンエンジンで同じことをやろうとすると、着火のコントロールが非常に難しく、これまで実用化した例はなかった。

マツダが出展した「SKYACTIV-X」
マツダが出展した「SKYACTIV-X」

 そこでマツダは着火のコントロールを確実にするために点火プラグを利用するという新たな発想の圧縮着火エンジン「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を開発した。これがSKYACTIV-Xだ。単にピストンが上昇するのに伴う温度上昇で混合気を着火させようとすると、着火の時期が不安定なので、点火プラグに点火することによって、周囲に局部的な燃焼を生じさせ、それによって生じる「膨張火炎球」の圧力によって圧縮着火を誘発するというものだ。

 では圧縮着火エンジンの何がいいかというと、これも「2019年に始まるマツダの次世代『SKYACTIV』」で解説したのだが、一つは従来のガソリンエンジンでは着火できないような非常に希薄な混合気を燃焼させることが可能なため、燃費が向上すること。そしてもう一つが、燃焼エネルギーが有効に駆動力に変換されることだ。点火プラグで点火する場合のように燃焼室の一個所から火炎が広がっていくのではなく、燃焼室内のあちこちで自然発火するので、燃焼終了までの時間が短い。ピストンが上にいる間に燃焼が終了するので、燃焼エネルギーが駆動力に有効に変換されるのである。

 希薄燃焼可能なことと、燃焼エネルギーが有効に駆動力に変換されること、という二つの特徴によってSKYACTIV-Xでは、燃費、最大トルクともに従来のSKYACTIVエンジンに対して、最大で30%向上するとしている。