フランクフルトモーターショーにおけるBMWグループのブース。建物まるまる一つを同グループが占有するという日本では考えられない規模だ
フランクフルトモーターショーにおけるBMWグループのブース。建物まるまる一つを同グループが占有するという日本では考えられない規模だ

 いつものアレがない…。会場入りして真っ先に気づいたのがそれだった。アレ、とは会場の中庭に立つ、巨大な仮設パビリオンだ。世界最大級のモーターショーの1つ、フランクフルトモーターショー(IAA)が9月12日から開幕した。最初の2日間はプレスデーで、朝の8:30から切れ目なしにプレスコンファレンスが続く。世界中からモータージャーナリストが集まる一大イベントの1つといっていい。

 東京モーターショーと違って、IAAは各社の出展するホールがだいたい決まっている。独ダイムラーがホール2を、独BMWがホール11を貸し切り、日本メーカーはホール8やホール9の、屋根が低く狭いホールに押し込められる、というのが最近の定番だった。そして独アウディは、中庭に設営した巨大な仮設パビリオン内にブースを構えるというのがお決まりだったのだが、ことしはその仮設パビリオンがない。だからちょっとびっくりしてしまったのだ。仮設パビリオンのない中庭は、いつになくがらんとして見えた。

プジョーも日産も出展せず

 そもそも今回のIAAは異例ずくめだった。日本メーカーでは日産自動車や三菱自動車が出展しなかったし、欧州メーカーでも仏プジョーや、フィアット・クライスラー・オートモービル(FCA)、スウェーデン・ボルボが出展を見送った。昨年のパリモーターショーでも、日本のマツダをはじめ、英ジャガー・ランドローバーや英ロールス・ロイス、英アストン・マーティン、英ベントレー、米フォード・モーター、伊ランボルギーニなどが出展を見送り、地盤沈下が叫ばれたのだが、世界最大級のモーターショーであるIAAには縁がないと筆者は思っていた。ところが、フタを開けてみると違った。こうした大手企業の出展とりやめで、中庭の仮設パビリオンが必要なくなったということなのだろう。

 しかも、出展内容を見て、もう一度驚くことになった。日本メーカーはもとより、ドイツ以外の欧州メーカーからは新型車の発表が少なく、大規模なブースに数多くの新型車やコンセプトカーを並べるドイツメーカーと他のメーカーの差が、あまりにも歴然としていたのだ。IAAといえば、欧州を代表する国際モーターショーであり、各国のメーカーが新型車を披露する晴れ舞台として展示を競うというイメージがあったのだが、今回のショーは、ドイツのローカルモーターショーという印象を強くすることになった。

 こうした傾向はいまに始まったことではない。もっとも早くその兆候が表れたのが東京モーターショーである。リーマンショック直後の2009年に開催された第41回の出展者数は、その前の第40回の241社から109社へ、入場者数も142万5800人から61万4400人と、いずれも半分以下になった。折しも、開催規模、入場者数とも膨れ上がってきていた中国の上海と北京のモーターショーにアジア最大のモーターショーという冠を奪われ、アジアの1ローカルモーターショーになったという感を強く受けたものだ。

 この後遺症は現在でも癒えておらず、10月末から開催される東京モーターショー2017は、GM、フォード、FCAのいわゆる「デトロイト・スリー」はもとより、ジャガー・ランドローバーやロールス・ロイス、アストン・マーティン、伊フェラーリ、ランボルギーニなどの高級車メーカーや高級スポーツカーメーカーも参加を見送った。このように、先進国でモーターショーの“ローカル化”が進む一方で、中国の北京、上海の2大モーターショーは膨張を続けており、市場の勢いの差を印象づけている。