市民の意識改革とデザインの重要性

編集部:被災地で高台に住宅を作るという話があるじゃないですか。そこではどうでしょうか。

大槌町での実験の様子。町役場とバス停を結ぶ。自動運転で運用。(2014年)
大槌町での実験の様子。町役場とバス停を結ぶ。自動運転で運用。(2014年)
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鎌田氏:実は岩手県大槌でもやろうとしています。あそこはバス停と仮設住宅の間が遠いんです。そこをつなぐのに使っています。

 このほか柏市でもトライアルしていまして、そのゴルフカートは前席を後ろ向きにして向き合って話ができるようにしたら好評でした。当然、運転手なしですから、ステレオカメラとレーザーセンサーで障害物を検知したら止まるようにしました。お金があればデザインを格好良くし、未来的なシャトルにしようと思っています。

柏の葉での自動運転実証試験。(2013年のITS世界会議に合わせて)
柏の葉での自動運転実証試験。(2013年のITS世界会議に合わせて)
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中川氏:鎌田先生、こんど、我々のフォーラムといっしょにやらせていただいてデザインをかっこよくさせてもらえれば、かなり変りますよね。これ、ヤマハ(発動機)のやつを改造したものですね。

 この前、タイにいったら、大学の中でゴルフカートを使っていました。これを連結できたりすれば、今度の東京オリンピックの域内コミューターとしてありかなと。ワイヤーといっても、今だと仮想的なワイヤーもできる。距離感だけでワイヤーとして。センサーとポイントの誘導装置をつけておけば、もっと柔軟な動きができる。線路というよりは点での運用をやればいいのではないかと考えているわけです。

 鎌田先生は、スマートシティーも手がけておられますが、気になっている街づくりの実証実験などはございますか。

鎌田氏:釜石の公共交通を手伝っているんですが、街の住民の多くがマイカー持っているので、公共交通機関は自分には関係ないよという感じで、なかなか議論に加わってくれません。当事者意識をもって、議論に加わって欲しいと思っています。市役所のほうでは、地域の未来を考えて、自分ごとにするということで、アクションプランを作っています。釜石は新日鉄の製鉄所があったころは9万人ほどいたんですが、震災も重なり今では3万6000人切るぐらいになっています。高齢化率は36%に達していて、待ったなしなんです。スマートシティーに一気に行くのは難しいんですけど、そこに向かって進んで欲しいと思っています。釜石は、別の町だと外からの介入などを排除したがるところもあるんですが、外からの人と知恵を使って先に進もうというところがある。

 自動運転なんかを含めて、いろんな技術はあるんだけど、それを実際に地域に入れていくとなると最後は人に行き着く。地域の人たちが自分の未来を考え、どういうツールをどう使えば自分たちにいいのか、そこがしっかり議論できるのが大事だと思います。

中川氏:釜石も含めて、こういうところに自動運転バスみたいなものがほしいですね。そのうち、コスト的に合わなくなって鉄道がギブアップになるところが一杯あるから。今年、(家電の展示会である)CESにいったんですけど、タクシーがつかまらず、ウーバーを使った。ラスベガスだし大丈夫かなと思ったんですけど、使ってみたら問題ない。一戸建てから団地に引っ越した方にお話を聞いたんですが、住んでみたらよかったけど引っ越すまでは不安で大変だったと聞きました。こんな風に違うことを始めるまでは壁がある。

 この壁を取り払うのにはデザインが大事なんだと思う。フィレンツェですごくスタイリッシュなバスを見たんですが、かわいいから乗りたくなる。前から、日本のタクシーも乗る気になるデザインにしろって言っていて。日本はクルマの国ですよ。なのに昔ながらのデザインでやっていて。オリンピックのときにやって欲しいのはまずタクシー。これをなんとかせいよ、ということです。バルセロナなんか、黄色と黒で統一されていて最新のクルマでかっこいい。日本は相変わらずY型エンジン載せた、80年代から変らないものが主流です。これがクルマを世界に売っている国ですかと。

鎌田氏: 2017年にはやっと、次のモデルが出るそうです。

中川氏:バスメーカーにもやるべきだといっている。既にある技術をつかってやれるんだから。ユーザーの声を聞いて欲しいということです。