信念を持って言い続ければ、いつかは実現する

鎌田氏:私はしつこい方で、鷹巣で超小型電気自動車をやったのが1998年で、国交省がやっと2013年に超小型モビリティーの認定制度をはじめた。ユニバーサルデザインタクシーも某社の役員にずっと言い続けてやっと動きが始まって、ちょっと前のモーターショーで展示されて、昨年のモーターショーでは2017年には出すといってくれました。

中川氏:いやあ、本当にずっとやってらっしゃるんですよね。30年かかるものを、なんとかその半分15年で動かすっていう感じ。そこが日本のしんどいところです。新しい発想で、デザインなりエンジニアリングを生活のなかに実装してみようというのにやっぱり15年ぐらいかかっているわけです。それを縮める日本にしないとだめです。

鎌田氏:デザインはまだまだって中川先生はおっしゃるけれども、低床の路線バス、ノンステップバスも私が旗をふってきました。できるまでは数年でできたんですけど、特別な福祉対応のバスと位置づけられて、車椅子固定装置も、スロープも全部自動ということで、ものすごく高いものになっちゃたんですよね。そうすると高いから買えないってなってくるんです。そこで標準化を進めてきたんですけど、進めすぎちゃってデザインとか色の使い方でクレームいただいたりしています。

中川氏:技術は日本にあるのに、なんでヨーロッパにやられているのか。フィレンツェで見たのはメルセデスでした。日本は余裕がなくなっているんです。一人ひとり話をすると、夢を持っているし、デザインに疑問をもっていたりするわけです。組織をまとめるのも大変ですが、個人の思いを上に上げていくのも大変になっている。そこをどうにかしないと。そういう意味で、場がない。先生も釜石なんかでやっていますけど。コミュニティーを創っていくことが日本には大事です。社会に開かれたオープンなラボみたいなものが必要だと感じています。みんな問題だといっているのに、農地の問題も、誰もとりくまない。

鎌田氏:二十数年やってきて、これが大事だろうと信念をもって言い続けると、時間はかかるかもしれないけれども、実現していく。だんだん賛同者が増えてきて。今日申し上げたことも今後も言い続けていけば、世の中は変っていくと思っています。

中川氏:ほんとうに語り部ですね。鎌田先生のように、何かを具体化しながら、語り部をしないとだめですよね。

十王町(茨城県、現在は日立市)での実験(2003年)
十王町(茨城県、現在は日立市)での実験(2003年)
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