著者(写真:栗原 克己)
著者(写真:栗原 克己)

 何か分からない事や決まっていない事が在ると「不安」になる。この後、きっと良くない事が起きるであろうと言う予感がした時には強い「不安」に襲われる。反対に何か好ましい事が起きるに違いないと想像した時には「期待感」で頭が一杯になる。私達は日常的に「不安」や「期待」の間を行ったり来たりしている。

 私達が日常的に感じている「不安感」や、その対極にある「期待感」。これらが私達の中でどのように呼び起こされているのか?そのメカニズムを科学的に解明したいと思い、「期待学(EXPECTOLOGY)」と称してこれから起きる事に対する予測感性に焦点を当て「不安」や「期待」に関する行動や心理に関した実験や研究を進めて来た。

 そもそもEXPECTOROGYなる概念を思いついたのは、私自身が長らくデザインを提供する仕事に関わって来たからだと思う。「期待感」こそが、使い手に使ってみたいという衝動を感じさせる動機の背景一部を形づくる要因になっているのではないかと感じ始めていたからだ。使い手の心理の中に在る「期待」という予測感性が、特定のデザインや製品に、興味や魅力といった感性価値を発見する心理基盤を築いているのではないか。そう考えたのだ。そして、その帰結として、背景となっているであろう「不安と期待」の心理的な関係にも強い関心を抱く様になった。