Advantech社社長のChaney Ho氏
Advantech社社長のChaney Ho氏
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 モノからコト、ハードウエアからソフトウエアやサービスへと価値の源泉が移行するといわれて久しい。IoT(Internet of Things)やスマート化は、その流れをさらに加速させるだろう。とはいえ、長らくハードを手掛けてきた企業が、いきなりソフトやサービスに軸足を移せるかといえば、実際にはなかなか難しい。

 そんな中、工場のスマート化に向けてソフトやサービスの開発体制を急速に強化しているのが台湾Advantech社である。もともと同社は、産業用PC(IPC:Industrial PC)や組み込みPCを主力製品とするメーカーだった。現在は、これらのPC製品に加えてソフトやITシステムなどスマート化に必要な“一式”を提供する「Solution Ready Platform(SRP)」に力を注いでいる。

 SRPでは、「可視化」「遠隔監視」などの目的ごとに必要な要素を、Advantech社が自社製品やパートナー企業製品の中からあらかじめ選定しておき、ユーザーの要望に合わせてパッケージの形で提供する。ユーザーにとっては選定・調達の手間がかからず、工程自動化や予知保全といった工場のスマート化に素早く着手できるという利点がある。「パッケージとして提供した時点でスマート化の作業は90%ぐらい終わっているので、ユーザーは残りの10%だけやればよい」。Advantech社社長のChaney Ho氏は、SRPの特徴についてこう語る。

Solution Ready Platform(SRP)の概要
Solution Ready Platform(SRP)の概要
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 SRPのようなサービスが求められる背景には、IoTの導入で工場のネットワークが変化していることがある。Advantech社インダストリアルIoTグループ アジアパシフィックのディレクターを務めるVincent Chang氏は、スマート化に向けて工場のネットワーク階層にパラダイムシフトが起きていると指摘する。

 従来、工場のネットワークは、ERP(Enterprise Resource Planning)を頂点として、その下にMES(Manufacturing Execution System)、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)/HMI(Human Machine Interface)、コントロールの各階層が存在し、末端にセンサーやアクチュエーターといったフィールド機器が連なるピラミッド型の階層構造で表現されることが多かった。だが、クラウドコンピューティングやエッジ(フォグ)コンピューティングの登場によって、それぞれの機能が各所に分散するようになっており、工場のネットワークが複雑化している。そのため、スマート化を手軽に実現できるサービスの需要が高まっているというのだ。

生産の機能が分散し、ネットワークが複雑化している
生産の機能が分散し、ネットワークが複雑化している
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