工場のスマート化に向け、マシンビジョンの重要性が高まっている。人の代わりに物体や文字を認識する「機械の目」は、生産設備が自律的に稼働するスマート工場の実現に欠かせない。

 マシンビジョン自体の活用は既に工場でも進んでいる。用途も品質検査や位置検出、文字読み取り、部品ピッキングなど多岐にわたる。ただし、それらはどちらかといえば大量生産に関する利用が多かった。なぜなら、どんな用途であれマシンビジョンを使いこなすには、画像処理や出力(判定)のルールを教え込む必要があるからだ。そして、その“教育”にはそれなりのコスト(手間や時間)がかかる。だからこそ、相応のスケールが見込める用途でなければ割に合わなかった。

MVTec社 社長のWolfgang Eckstein氏
MVTec社 社長のWolfgang Eckstein氏
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 しかし、そのような状況を変え得る技術が出てきた。それが、ディープラーニング(深層学習)である。ディープラーニングによってルールを自動で学習・生成できるようになれば、マシンビジョンの用途も一気に広がる可能性がある。作るものが頻繁に変わるラインでもマシンビジョンを活用できるようになり、いわゆるマス・カスタマイゼーションも夢ではなくなる。

 ドイツMVTec Software社(以下、MVTec社)はマシンビジョンへのディープラーニング導入に積極的な1社である。2016年11月に提供を開始したマシンビジョン向け画像処理ソフトの新版「HALCON 13」は、同社製品としては初めてディープラーニングを採用した。