生産設備やシステムが相互に接続し、状況に応じて自律的に稼働する。そんな「スマート工場」に関する取り組みが加速している。センシングや通信などの要素技術が進化し、実現に向けた環境が整ってきた。しかし、そこには大きな課題が残されている。「誰がスマート工場の生産ラインを構築するのか」ということである。

 大企業であれば、そのような悩みとは無縁だろう。例えば、トヨタ自動車は工場におけるIoT(Internet of Things)活用を強力に推進している。同社の誇る生産技術部門が中心となって、IoTによる品質や生産性の向上、人材育成に取り組んでいる(『日経ものづくり』2017年1月号の特集「トヨタ、止まらない進化」の記事)。

 だが、トヨタ自動車のサプライチェーンに連なる末端の部品メーカーはどうか。スマート化で生産性や品質が大幅に向上すると分かっていても、人材や投資余力などの面で大企業のようには進められないのが現実だ。トヨタ自動車にとっても、自社工場のスマート化だけでは不十分であり、部品メーカーを含めたサプライチェーン全体のスマート化が最終的な目標であることは間違いない。工場のスマート化を見越して2016年4月に採用を表明したオープン・フィールドネットワーク「EtherCAT」についても、「全世界の部品メーカーにEtherCATの採用を推奨する」(トヨタ自動車先進技術開発カンパニー工程改善部長の大倉守彦氏)としていた(関連記事)。

ジェイテクト取締役副社長、工作機械・メカトロ事業本部本部長の井坂雅一氏
ジェイテクト取締役副社長、工作機械・メカトロ事業本部本部長の井坂雅一氏
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 中小企業の部品メーカーでいかに工場のスマート化を進めるのか。この難題に挑もうとしているのが、ジェイテクトだ。同社は、トヨタ自動車系列の部品メーカーでありながら、工作機械やコントローラーなどの生産設備も手掛けている。ジェイテクトは、それらの技術やノウハウを組み合わせることで、スマート工場の生産ラインを構築する“ラインビルダー”としての地位を狙っている。「トヨタ自動車のような自動車メーカーや、デンソーのようなティア1(1次部品メーカー)は、自社だけでスマート工場を実現できる。だが、ティア3、ティア4になってくると社内のリソースも限られており、なかなか対応できないだろう。そこを支援するのが我々の役割になる」(ジェイテクト取締役副社長で工作機械・メカトロ事業本部本部長の井坂雅一氏)。

 実は、トヨタ自動車の工場におけるIoT活用の取り組みではジェイテクトもその一翼を担っている。ただし、そこで取り組みをリードするのはあくまでトヨタ自動車である。一方、中小企業の顧客と進める工場のスマート化では、ジェイテクトも顧客と同じ目線で主体的にライン構築に関わっていくというのだ。