会社の財産となる「技術のノウハウ」

 技術基準は、「会社独自の技術内容」を蓄積した資料(データベース)です。製品や部品名に対して技術の内容を記載し、その技術を活用した効果などをまとめます。ここに、開発時点で苦労した点などをまとめると、より活用しやすくなるでしょう。そうした内容を新たな技術を生み出すたびに蓄積していきます。

 技術基準としてまだまとめていない会社は、まず設計者に帰属している技術の内容を抽出し、棚卸しする必要があります。技術の棚卸しをすると意外な技術が見つかることがあります。例えば、特に新しい技術ではないけれども、既存の技術同士を掛け合わせることによって生まれる付加価値です。少し古い製品になりますが、ソニーの「ウォークマン」は既存の技術の組み合わせにより、顧客に新しい付加価値を提供したと考えてよいでしょう。

 既存の技術とはいえ、それまであったカセットテーププレイヤーを小型化する技術を新たに検討しなければならなかったはずです。その小型化には多くの苦労があったと思います。まさにその苦労が、会社にとって財産となる「技術のノウハウ」なのです。この小型化のノウハウが会社にいる全ての設計者が知るべき内容であり、そうすれば他の製品にも展開が可能になるのです。

 ここで、新しい技術と検図の関係性を考えてみましょう。検図者は、新しい技術の情報を知っているでしょうか。残念ながら、検図者が新しい技術を全て知っているとは限りません。しかし、検図のときに技術内容を知らなければ、検図はできません。加えて、検図者の能力により、図面への読解度が変わってきてしまいます。

 技術基準があれば、図面に使用されている技術がどのようなものかを簡単に把握することができます。技術の内容によって注意しなければならないポイントも検図者には分かります。その結果、図面品質は確保され、「後工程に問題が流れない=フロントローディングの実現」が可能となります。

 検図にも新製品展開にも技術基準は必要です。製造業にとっては人財(人材)の次に重要な財産にもなります。皆さんも1度、技術の棚卸しを実施して、技術の基準となるものを作ってみてはいかがでしょうか。