中山聡史=A&Mコンサルト 経営コンサルタント
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中山聡史=A&Mコンサルト 経営コンサルタント
 今回は、DR(Design Review /設計審査)について考えてみたいと思います。本コラムの第2回でも述べた通り、DRは検図と同じぐらい重要なイベントです(既に検図の重要性は理解されていることを前提としています)。ところが、それほど重要なDRが軽視されている場面が日本企業では多々見られるのです。

 軽視とはいっても、DRを実施しなければならないことは皆さん理解しているようです。従って、実施してはいます。ところが、時間に余裕がないため、実施しているのは本当の意味でのDRではなく、形式だけのDR。これにより、なし崩し的に図面が出図され、その図面で製造した製品がお客様に届けられているのです。

 このコラムを読んでいる読者の皆さんは、設計への意識が高い設計者だと思います。そのため、こんなことをしていたら、どのような問題が発生するか簡単に想像がつくことでしょう。こうした状態でお客様に届けられた製品は、機能や性能が十分ではなかったり、不具合が発生したりする可能性が高くなります。たまたま問題が発生しなかったとしても、次の開発時にこの製品を流用するとどうなるでしょうか。より高い確率で問題が起きるはずです。

 なぜ、そうなるのか。理由は、設計検証ができていないからです。確かに、設計者は自ら設計検証を行っています。しかし、設計者だけの知見で全ての設計検証が可能であれば、そもそもDRというものがこの世に存在するはずがありません。

 DRの目的は、「問題の未然防止」です。検図とは使用するものが異なりますが(検図:図面と補完資料、DR:設計検証資料)、目的は同じ。製品ライフサイクル中に不具合を発生させずに、市場から要求された機能や性能を維持することです。

 では、日本企業が実施しているDRには、どのような問題が発生しているのでしょうか。私がさまざまな企業を支援している中で、問題だと考えるものを列挙してみましょう。

[1]レビュアーがつるし上げ、他の人は黙って聞くだけになっている。
[2]事前に資料が配布されず、当日にいきなり説明されるため、内容を吟味する時間がない。
[3]部門間で対立する利害を調整するだけに終わっている。
[4]結論が出ない。
[5]好ましくない事態や異常事態(リスク)を予測しない。
[6]DR終了後に改善点をフォローせずに放置している。
[7]時間がムダに長い。
[8]単なる進捗の報告会になっている。

 皆さんの会社のDRはどうですか。こんな内容であれば、DRを行う意味はありません。