中山聡史=A&Mコンサルト 経営コンサルタント
中山聡史=A&Mコンサルト 経営コンサルタント
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 「設計をスタートさせるには最低限5つの項目を明確にする必要がある」──。そう前回のコラムで話しました。そして、それらの項目のうち、[1]製品コンセプトと[2]機能系統図について説明しました。今回は残りの3つについて説明しましょう。すなわち、[3]設計方針、[4]目標コスト、[5]開発スケジュール、です。

 まず、[3]の設計方針です。ここで言う設計方針とは、開発設計を複数の設計者で実施するために必要となる重要な方針のことです。

 設計方針がないまま複数の設計者が異なる部品を設計し、1つの製品を完成させたらどうなるでしょうか。部品を組み合わせてみると目標とする性能が発揮できない、部品間の擦り合せの問題で目標とする品質が未達となる、といったトラブルが発生します。

 こうした事態に陥る理由は、1つの製品を設計するために、どのようなベクトル(≒方針)で設計すればよいのかが明確になっていないからです。従って、設計者ごとの設計内容に「ずれ」が発生してしまうのです。設計者はこの「ずれ」を可能な限りなくす必要があります。だからこそ、設計方針が欠かせないのです。

 ただし、私は「ずれ」がゼロになるとは考えていません。設計者が複数いれば、どのように素晴らしい方針を立てていたとしても多少の「ずれ」は発生するものです。しかし、その「ずれ」を設計者同士のコミュニケーションや打ち合わせなどを通じて小さくしていく。こうして「ずれ」を極力小さくするにするために、設計方針が不可欠なのです。

 では、設計方針とはどのようなものなのでしょうか。設計方針は製品の企画を満たすためにあり、想いを明確化するものです。具体的には、(1)設計の考え方・想い、(2)競合他社との技術の差異化方針、(3)コスト方針、の3つから成ります。

 このうち、(1)の設計の考え方・想いが最も重要です。自動車開発で例えると、「世界トップの○○システムを実現するために、高効率な吸気システムを導入する」といった具合です。特に太字部分の「目指すところ」と「具体的な手段」を織り込む必要があります。