本連載は、2016年2月9日発行の『知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く』(日経BP社)の第1章から抜粋して編集したものです。保有している知的財産を最大限に生かして、ビジネスの強みを生み出すための方策と最新事例を、数多くの実績を上げている法律事務所と会計事務所の視点から、ビジネスパーソンの目線と価値観に合わせてわかりやすく解説します。

 これまで、「技術と知財で勝る日本が世界でなぜ勝てないのか(第1回)」という観点から市場シェアと知財の関係について説明してきた。今回は、知財ステージ(「工業製品のコモディティ化は必須特許の出願余地で決まる(第3回)」参照)ごとの戦略立案について解説する。

 知財戦略を考える場合、まずは対象となる事業の知財ステージを確認することから始める必要がある(表1-5)。なぜならば、事業が導入・成長期にある場合と、衰退期にある場合では、とるべき知財戦略が全く異なるからである。

【表1-5】製品の知財ステージごとに採るべき知財戦略
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【表1-5】製品の知財ステージごとに採るべき知財戦略
 前回解説した知財ステージI(導入・成長期)にある事業ならば、開発投資を進めて特許を量産する、日本企業が得意とする図式で知財戦略を進めればよい。しかし、知財ステージIII(衰退期)に近づいた事業の場合、このような知財戦略は意味をなさない。必須特許が取得しにくい状況になっているからだ。

 このような場合には、[1]機能性とは別の付加価値で勝負する、[2]技術のコモディティ化を遅延させる努力をする、[3]技術革新を起こし衰退期から導入・成長期へとさかのぼる、のいずれかの戦略を採ることになる。以降、これら[1]ないし[3]について、順を追って詳しく説明していきたい。