機能別に武器を持つ

 会社として決めた戦い方を着実に実行するには、各機能部門に戦うための「武器」を装備する必要がある。以下が具体例だ。これら各機能を強化することで、会社としての戦略を実行できるようになる。

図2●機能別の「武器」
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図2●機能別の「武器」

全てに共通して重要な部門間連携

 会社としての戦い方を実行するにも、機能別の武器を有効に機能させるためにも、共通して重要なことがある。それは部門間連携だ。

 重要な戦略に1部門のみで完結できるものはない。開発や調達、生産、営業などの各機能部門が有機的に連動してこそ、戦略を実行して稼ぐことができる。また、特にフロントローディングの実行に重要な点だが、機能部門だけでなく経営企画などの全社共通部門とも連携し、戦略と会社損益を結び付けてこそ、真に利益を生む。

 「そんなことは言われなくても分かっている」と感じた読者も多いだろう。部門間連携の重要性は多くの人が十分に認識していることだからだ。しかし、本当に実行できているかどうかを今一度、考えてほしい。

 開発部門であれば製品の要求性能や機能の達成度、調達部門であれば調達削減額、生産部門であれば品質・納期遵守率、営業部門であれば売上高と、部門ごとに目標として設定される指標があるはずだ。これらの目標を達成するために、各部門は必死に活動しており、他部門の目標達成のために自主的に動く余裕がある部門は少ないだろう。そこに部門別の損益といった指標まで加われば、結果は言うまでもない。

 ものづくりの技術から生産まで、そして顧客の利益から自社の損益までを全て鑑みて動くことは、各部門間の調整だけでは実質的に不可能だ。では、どうするか。全社を横串で見る組織、すなわち「プロダクトマネジャー」を設置することだ。自動車メーカーでは古くから「主査制度」があるが、まさにそれに当たる。

 開発、調達、生産、営業の全体を俯瞰しながらマネジメントし、稼げるようにする。それがプロダクトマネジャーの仕事だ。1つの製品カテゴリーについての経営者と言ってもよい。ものづくりの良しあしは最終的には損益に表れる。従って、プロダクトマネジャーにはものづくりから損益まで一気通貫で責任を負わせることが重要だ。

 プロダクトマネジャーを設置して部門間連携、戦略と損益の紐付けを着実に実行する、これができてこそ、戦略の実行、10年後の勝ち残りが見えてくるのだ。

最後に

 冒頭に示した通り、自動車部品メーカーを取り巻く環境はかつて経験したことがないほど大きな変化を迎えている。低コスト化と高付加価値化、モジュール化、システム提案など、さまざまなことに同時に対応しなければならない。

 しかし、このコラムの第1回で解説した通り、大きな変化を迎えているからこそ「自動車部品メーカーにチャンスあり」だ。標準部品の座を獲得すれば、車種をまたいで採用され、長期間まとまった数量を受注できる。その上、採用実績と量産効果による低コスト化を武器に、他の自動車メーカーに売り込みをかけられる。こうした好循環を生み出せる環境にあるのだ。

 ただ、大きな変化を迎えているとは言っても、これまで積み上げてきたことがムダになるわけではない。積み上げてきたことをベースにして変化し続けること。これこそが重要なのだ。

 戦略も然り。最初から最後まで完璧なものなどあるわけがない。どんなに素晴らしい戦略も、時が立てば陳腐化する。戦いに勝ち続けるには、戦略も常に進化させ続けなければならない。

 大きな変化をチャンスと捉えて進化し続け、10年後に日本の自動車部品メーカーが1社でも多く勝ち残ることを心から期待しつつ、本コラムの筆を置きたい。