野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
 自動車部品メーカーを取り巻く環境は、かつて経験したことがないほど大きな変化を迎えている。これまで以上の低コスト化や高付加価値化、モジュール化、電気自動車(EV)化などに対応しなければならない。ここで対応を誤ると勝ち残ることはできない。本コラムではこれまで17回にわたり、こうした大きな変化に対応して10年後に勝ち残るための戦略について解説してきた。最終回の今回はこれまでの連載内容を総括する。

会社としての戦い方を決める

 勝ち残るために自動車部品メーカーが目指す姿は、「ものづくりレベル3」に達することだ。モジュール化に対応するシステムを自ら提案し、自動車メーカーから「それが欲しい」と言われる水準である。

 この水準に達することは、自動車メーカー側と自動車部品メーカー側の双方にメリットがある。自動車メーカーは、ユニークで競争力のあるモジュールを入手できる。加えて、通常のシステム開発を自動車部品メーカーに担ってもらうことで、自動運転やEVといった先進的な開発に自社のリソースを集中できる。一方、自動車部品メーカーは自社製品のシステムの中に「擦り合わせ」要素を取り込むことで技術の「ブラックボックス」化を図ることができ、競合他社に対する参入障壁を築ける。

図1●自動車部品メーカーのものづくりレベル
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図1●自動車部品メーカーのものづくりレベル

 しかし、いきなり「ものづくりレベル3」を目指せるわけではない。まずは「ものづくりレベル2」の水準に達する必要がある。レベル2とは、自動車メーカーから「この仕様で造ることができますか?」と言われる「ものづくりレベル1」を超えて、フロントローディングによって自ら仕様を提案できるレベルのことだ。

 本コラムで再三、重要性を解説してきたフロントローディングは全ての戦略の基礎となる戦い方である。従って、どの自動車部品メーカーにとっても重要だ。部品や各部門のロードマップを描き、自動車メーカーから部品コスト見積もり依頼書(RFQ)が発行される前に、自動車メーカーに対して仕様の提案を仕掛けるのだ。

 ただし、フロントローディングの実行によりレベル2にステップアップしても、全ての自動車部品メーカーがレベル3を目指せるわけではない。レベル3、つまりシステム提案ができるようになるには次の3条件が必要になる。[1]システムの性能を決定付ける主要製品の自社開発・生産、[2]システム性能の測定・分析力、[3]システムの設計・構築力、である。

 これらの3条件を満たすことは理想だが、全てを満たせる自動車部品メーカーは限られるというのも現実だろう。では、満たせない自動車部品メーカーはどうするか。システムを提案・納入できる1次部品メーカー(Tier1)に不可欠な存在である「スーパー2次部品メーカー(Tier2)」を目指せばよい。新たな技術優位企業としてのアイデンティティーを確立するための戦略的なポジション変更である。