グローバルに事業を展開する完成車メーカーや1次部品メーカー(Tire1)は、部品の品質のばらつきを減らし、まとめ買いのメリットを享受するために調達先を絞りたいと考えている。顧客から選ばれるためには、言うまでもなくグローバルな供給体制を整え、かつコスト競争力を備えた自動車部品メーカーでなけれればならない。
こうした自動車業界の背景があるため、自動車部品メーカーが新工場を設立してグローバルな供給体制を整え始めるきっかけは、自動車メーカーやTier1から「工場の近隣で製品を供給してほしい」というオーダーであることが多い。しかし、中・長期的な採算性や販路の広がり、減価償却などについて冷静な検討をせずに進出したばかりに、結果として赤字が続いているケースは枚挙にいとまがない。例えばこんなことになっていないだろうか。
・進出したのはよいが、十分な数量が流動せずに設備過剰になった
・新工場に最新設備を導入し、合わせて生産を集約して生産性を高めたが、かえって輸送費が高くついた
・工場が増え、各工場の役割があいまいになって拠点最適に走ってしまった
では、新工場を建ててグローバルに進出する際に、どのような項目を検討することが必要だろうか。検討のガイドとなるようものづくりの基本であるQ(Quality)C(Cost)D(Delivery)の観点から考えていきたい。
新工場設立に必ず必要な論点
まずは図1を見てほしい。
Qについての論点は、顧客要求に直結して自社の強みとなるコア工程が新工場に必要かどうかを見ていく。コア工程でないなら外製化を考え、生産費用の低減と投資抑制について努力すべきだ。
コア工程が必要であれば新工場に設置し、自社の強みにつなげる。CとDについての論点は、既存または新工場のどちらかで集中生産することで規模の経済のメリットを取るか、それとも既存工場や新工場で分散生産して輸送費の抑制や輸送リードタイムの短縮を取るかを見ていく。
ただし、ここには製品・部品のサイズが大きく影響する。製品・部品のサイズが大きければ規模の経済のメリットを輸送のデメリットが覆してしまう。製品・部品のサイズが小さい場合は輸送のデメリットが薄まり、規模の経済のメリットが強調される。以上の論点について基本方針をまとめると図2の通りになる。