野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
 これまで本コラムでは、自動車部品メーカーが10年後に勝ち残るための戦略(システムサプライヤーかスーパーTier2になること)と、戦略実行に必要な開発の武器(要件ばらしとQFD)、調達の武器(グローバル調達戦略の策定・実行)などについて解説してきた。

 自動車業界で自社がどのような立ち位置を目指すのか。顧客要求を抜けや漏れなくいかに要件に反映させるか。いかに正しく製品仕様に反映させるか。いかにグローバル全体で部品コストを削減するか。これらは非常に重要だ。

 では、これらを実行すれば確実に10年後に勝ち残れるのだろうか。答えは「No」だ。言うまでもなく、製造業は最後に製品を造って初めて成立する。年々、開発や調達機能の重要性が増してはいるものの、製造業の要はやはり生産だ。だが、皆さんの生産現場では、次のような「あるある問題」が起きていないだろうか。

     <生産戦略における悩ましい問題‘あるある’>
・自社が狙う市場や顧客が曖昧なまま、社長の一声で新工場建設が決まった
・海外に新工場を建設した後、日本の工場がガラガラとなり、マザー工場として技術蓄積ができない
・顧客の提示数量をうのみにして工場の生産規模を決定し、生産体制を構築した。だが、実際には提示数量よりも大幅に少なく、生産体制が余剰になった
・海外工場に日本よりも最新の設備を導入したが、日本と設備仕様が異なるためグローバル全体で製品仕様や工程を標準化できない
・サイクルタイム短縮などの生産性を改善する施策に取り組んでいたが、急に生産品目や数量が変更になり、検討した施策効果が全く実現できない

 こうした状態では、どれほど良い製品仕様を設計し、どれほど安く部品を調達しても稼ぐことはできない。日本の製造業が得意とする生産現場での生産性の改善以前の問題だ。グローバルのどこで何をどうやって造るのかといった、今後の生産戦略を明確にできていない現状があちこちで見受けられる。