野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
 1次部品メーカー(以下、Tier1)にとって、製品ライフサイクル全域に渡る継続的なコストダウンは、勝ち残るための「Must(必須)」の活動だ。コストダウン効果を最大化するには、調達部門のみで活動するのではなく、営業部門や開発部門と連携して進めていくことが重要である。つまり、調達部品ごとにどのような方針でコストダウンしていくかを明確にするためのグローバルな調達戦略が必要なのだ。その調達戦略の策定ステップを前回のコラムで解説した。今回は、策定した調達戦略を具体的な製品モデルに織り込むポイントを解説したい。

 部品調達先である2次部品メーカー(Tier2)を切り換える場合や、仕様変更を伴う施策の場合、効果の高い施策であってもTier1が実行しきれていない事例を我々は幾度となく見てきた。なぜ難しいのだろうか。

 それは、Tier2への単純な値下げ交渉に比べ、社内外のコミュニケーションが圧倒的に複雑で難易度が高いためである。自動車部品メーカーがVAやVEを実践し、Tier2の切り換えを行ってコストダウンを実現するためには、以下の 3つのコミュニケーションが発生する。

[1]自動車メーカーとのコミュニケーション(自動車メーカーの承認取得や売価反映額の調整など)
[2]自社内でのコミュニケーション(実機試験や量産試作、自動車メーカーの承認など、各種イベントのタイミングの擦り合わせ)
[3]Tier2とのコミュニケーション(部品切り替えのタイミングや単価交渉など)

 1つのコストダウン施策を実施するだけで、限られた時間内に、適切なタイミングで、関係者間でコミュニケーションを行わなければならない。この難易度が極めて高いのである。