野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー

部品単体ではなく技術や仕様の提案力が必須

 自動車メーカーから、こう言われた自動車部品メーカーはないだろうか。

「次機種の部品コスト見積もり依頼書(RFQ)の対象は、部品単品ではなくシステム単位で出します(つまり、部品単品では調達しないということ)」
「車両性能やシステム性能を向上させる技術や仕様を提案して下さい」
「自動車市場や環境、自動車での部品の使われ方を全て考慮し、耐久性を確保できるように部品設計して下さい」

 自動車部品メーカーに対し、本コラムではこれまで「フロントローディング」という組織全体の能力が重要であると述べてきた。自動車メーカーから仕様提示を受ける「ものづくりレベル1」から、自ら仕様提案を行う「ものづくりレベル2」へとレベルアップするためだ。ただ、ものづくりレベル2であっても、いつまでも安泰とは言い切れないというのも事実だ。

 自動車部品メーカーがレベルをより高めるには、部品単体ではなくシステムの納入やその仕様の提案を行うことが求められる。自動車メーカーはリソース不足に陥りつつあるからだ。自動車メーカーは今、電気自動車や自動運転車などの次世代自動車の開発にリソースを集中せざるを得ない状況にある。その分、エンジンやサスペンション、エアコンといった既存のシステムにリソースを割く余裕を徐々に失っている。

 こうした背景から、自動車メーカーは自動車部品メーカーにシステムの納入やその仕様の提案を期待するようになっている。この変化の中で、自動車部品メーカーが、部品単体を提供するというこれまでと同じ戦い方で勝ち残ることはできない。つまり、これからはシステム提案ができない自動車部品メーカーは、自動車メーカーからの「選定の土俵」に乗ることができず、RFQが発行されない恐れがあるということだ。こんなことでは、自動車メーカーとビジネスを継続することがどんどん困難になっていくだろう。

直接納入・提案か、Tier1が離さない存在になるかの二択

 では、どうすれば勝ち残ることができるのだろうか。戦い方は2つある。1つは、自動車メーカーに直接システムを提案・納入する1次部品メーカー(Tier1)、すなわち「ものづくりレベル3」へと進化することだ。もう1つは、ものづくりレベル2を維持しつつ、システムを提案・納入できるTier1に不可欠な存在である「スーパー2次部品メーカー(Tier2)」になることである。いずれにせよ、自社の10年先を見据え、改めて自社のポジションを見直して、そのポジションを確立すべくリソースを集中することが求められる。

図1●自動車部品メーカーのものづくりレベル
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図1●自動車部品メーカーのものづくりレベル