野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー

3つのレベルで評価

 自動車メーカーは、新興国市場の拡大や価値観の多様化、省エネルギー化などへの喫緊の対応を求められている。これらの対応にリソースを集中せざるを得ない。そのため、これまで自動車メーカーが実施してきた部品仕様設計や部品間の擦り合わせを自動車部品メーカーに肩代わりさせるようになってきている。自動車部品メーカーが仕様設計や擦り合わせを肩代わりするためには、「提案力の強化」と「製品のシステム化」が必須となる。そこで今回は、ものづくりレベルのメジャーメント(評価方法)を提示する。

<ものづくりレベル1>
自動車メーカーから「この仕様を造れますか?」と言われるレベル。

 このレベルは、自動車メーカーのニーズを実現するに当たって、自社部門ごとの課題が見えていない状態である。従って、自ら仕様を決めることができない。決められないために、当然、開発ができない。従って、開発する際に自動車メーカーから仕様を提示してもらう必要がある。

 仮に現在、自動車メーカーから引き合いが来ているとしても安心はできない。提案力がある自動車部品メーカーに取って代わられる可能性が大いにあるからだ。自動車メーカーから見ると、自動車部品メーカーから仕様の提案がある方が、部品仕様設計に割り当てるリソースを節約でき、アーキテクチャー設計に注力できる。

 このレベルから脱却するには、他の企業に取って代わられる前に提案力を強化する必要がある。なお、解決策はフロントローディングである。

<ものづくりレベル2>
フロントローディングで自ら仕様を提案することができ、自動車メーカーの方から「そこまでできるのであれば、ここまでを一緒にやろう」と言われるレベル。

 フロントローディングによって自動車メーカーのニーズを実現する際に、自社部門ごとの課題がつながっているため、自社の強みと制約を踏まえて自動車メーカーと共に仕様を詰めていくことができる。ただし、自動車メーカーから見ると仕様設計は任せられるものの、モジュールの構成部品間での擦り合わせには依然としてリソース投入が必要な状態である。

 このレベルから上に進むには、部品群を擦り合わせた統合的なシステムの提案力をつける必要がある。自動車メーカーと仕様を詰めていく中で、クルマ全体やモジュールの構成、使用環境に関して知識と経験を得て、システム提案までできる力をつけることがポイントだ。提案しなくても自動車メーカーの方から声が掛かる総合力を育てることが大切となる。

<ものづくりレベル3>
モジュールに対応するシステムを提案し、自動車メーカーから「それが欲しい」と言われるレベル。

 自動車メーカーから見ると、ユニークで競争力のあるモジュールを入手できる上に、アーキテクチャー設計に専念できるため重宝される。自動車部品メーカーの都合で考えると、自社製品のシステムの中に擦り合わせ要素を取り込むことでブラックボックス化でき、競合他社に対する参入障壁を築くことができる。

(注:システムというと、ソフトによる制御を含むシステムがよく話題に上がる。だが、本コラムではハード部品の組み合わせ、例えばサスペンション(メンバーとリンク、ダンパー、スプリング、スタビライザーの組み合わせ)なども擦り合わせ要素を多分に含むため、システムと呼ぶ。)

 皆さんの会社は今、ものづくりレベル1~3のうち、どのレベルだろうか。

自動車メーカーのものづくりレベル
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自動車メーカーのものづくりレベル