野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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野口 宏太=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー
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三井 喬士=経営共創基盤(IGPI)マネジャー

自動車メーカーの基本的な取り組み課題

 今、自動車メーカーは次のような課題を抱えている。「低価格帯のクルマでも利益を確保する」「限られたリソースで無限にあるとも言える幅広い顧客ニーズに対応する」「安全や環境、そして低燃費性能の強化」──である。これらは自動車メーカーにとって喫緊の課題だ。こうした課題を乗り越えるべく、自動車メーカーは[1]低コスト化と高付加価値化、[2]アーキテクチャー設計、という2点に力を入れていることを、まずは押さえておきたい。

[1]低コスト化と高付加価値化
 低価格化を実現するために、自動車メーカーは車種間における部品の共用化を大胆に進め、大幅なコスト低減を目指している。併せて、「地産地消」により、現地の労働力の活用や輸送費の低減、税制優遇措置もしっかりと狙っている。

 一方で、多様な顧客ニーズに応えるために、自動車の高付加価値化も追求している。具体的には、環境性能や低燃費性能に優れるハイブリッド車や電気自動車などのような電動車両や、高度な制御で可能になるぶつからないクルマ、自動駐車などの高度な運転支援機能、そして完全自動運転などである。

[2]アーキテクチャー設計
 自動車メーカーは利益と商品性を高めるために、低コスト化と高付加価値化という二極化を限りあるリソースで両立させなければならない。それを実現する手法として注目されているのが「モジュール化」だ。

 車体の各部をモジュール化し、各モジュールにバリエーションを持たせて、その組み合わせによって商品性の異なる自動車を造る手法だ。各モジュールは車種間で共通化されるため、量産効果で低コスト化できる。また、1度モジュールを造ってしまえば組み合わせでさまざまなクルマを生み出すことが可能だ。そのため、リソースを節約しながら幅広い顧客ニーズに応えることができる。そして、こうして節約したコストとリソースを高付加価値化のための開発に充てることができる。

 ただし、こうした利点を享受するには、次のようなアーキテクチャー設計が必要になる。クルマの機能とモジュールの対応関係の「見える化」や、モジュール間のインターフェース設計、モジュールのバリエーション設計といったものだ。

 目下、自動車メーカーはアーキテクチャー設計に奮闘しており、モジュールを構成する個々の部品仕様設計と部品間の擦り合わせにまで手が回らなくなってきている。

グローバル市場と自動車メーカーの課題
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グローバル市場と自動車メーカーの課題