もう一方のインドはどうか。4輪車に先行して新興国市場での浸透が進む2輪車市場を参考にすれば、インドメーカーがBRICsに続く“新”新興国市場における覇者になる可能性は高いと言える。実際にアフリカにおける2輪車市場では、一時期席巻していた廉価な中国メーカー製品をよりバリューフォーマネーを重視したインドメーカー製品が駆逐する、といった流れになっており、4輪車においても同様の流れが十分に考えられる。

 しかしながら、投資余力を蓄える基盤となるべき国内市場での利益競争の厳しさや徹底的な資産圧縮を志向するインドメーカー自身の投資性向を考えると、中長期にわたる蓄積が重要な意味を持つ技術、ブランドへの投資は不可能に近く、ハイエンド市場・製品セグメントへの自力参入は難しいと考えられる。

 それ以外の資源国の場合、楽して儲けることが染みついており、投資をするにしても手っ取り早く儲かるサービス産業や投資産業に振り向ける発想が強く、今から製造業の中でも最も複雑度の高い自動車のようなバリューチェーンを作り上げるといった産業政策は取りにくい。

 このようにして、国単位での競争環境としては、現在のような先進国リーグ内での競争が激化していく可能性が高く、この中でどう競争力を持続的に高められるかが日本にとっては重要になるだろう。