IoTを事業に取り込む動きが加速する中、見えてきた課題を先行して解決するための技術開発が活発化している。「2030年のIoT」では、2020年代の実用化、2030年の普及を目指すIoT向け新技術の開発動向を紹介する。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2016年度に委託した「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」から、いくつかの開発テーマを先端事例として取り上げる。いずれも日本の企業や研究機関が実施し、独創的な製品やサービスを可能とする次世代IoT基盤の実現を目指す。センサーによるデータ収集、ストレージへのデータ蓄積、AI(人工知能)などによるデータ解析、一連の工程を安全にこなすためのセキュリティ処理を対象としている。
2030年のIoT
目次
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東芝が次々世代メモリーをストレージ向けに
データ中心時代に向けて荏原・TELと共同開発
東芝は、現在量産中の3次元NANDフラッシュメモリー「BiCS FLASH」の次々世代に相当するメモリー技術をIoTシステム向けに開発している。「エッジコンピューティング」用途に向けて、新しい不揮発性メモリー技術と、記憶素子間を結ぶ新しい配線技術を実現する狙いだ。
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消費電力1/10のMEMSセンサー、自立電源で動作
東芝がSiGeベースの“センサーオンCMOS”を実用へ
東芝は、IoTシステムに使うセンサー素子を大幅に省電力化する技術を開発中だ。加速度センサーやジャイロ(角速度)センサーなどの消費電力を既存の1/10以下にして、電池に頼らずエネルギーハーベスティングデバイスによる電力で継続動作を可能にする。社会インフラや産業機器など長期にわたる監視の保守コストを抑え…
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データベースの消費電力を桁違いに削減、「非順序型」で
東大と日立がデータ資本主義時代の新技術を開発
東京大学と日立製作所は、ビッグデータ解析の基盤となるデータベースシステムの消費電力を大幅に削減する技術を共同開発中である。東京大学 生産技術研究所 教授の喜連川優氏らの研究室が開発した「非順序型実行原理」データベースで、消費電力量を1/100倍以下にする。
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「ヒトのインターネット」で未来の働き方をこう変える
東工大や富士ゼロックスが“IoH”を開発中
「ヒトならではのインターネット、すなわちIoH(Internet of Human)を作りたい。IoHはモノのインターネットIoT(Internet of Things)の拡張版ではないはずだ」
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IoT市場はメイカーズの力で開拓せよ、トリリオン時代の開発・進化論
「ヒットしないものを許容しないとヒット商品は出てこない」――。このように語るのは東京大学の桜井貴康氏(東京大学 生産技術研究所 教授)だ。
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環境に適応し進化するセンサー、次世代IoT基盤へ
調整不要で大量設置しやすく、日立などが開発
使えば使うほどセンサー端末が有益な情報のみを出力するように進化する“学習型IoT(Internet of Things)”システムの開発が、このほど始まった。センサー端末とクラウドサーバーとの間に「コンセントレーター」と呼ぶ機器を設けて、過去のセンサー情報に基づく学習を実行する。センサー端末は、学…
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産官学連携のIoT開発プロジェクト、次世代基盤を目指す
2030年の普及を目指す“高度IoT(Internet of Things)社会”に向けて、データの収集・蓄積・解析の技術を横断的に開発する日本の大型プロジェクトが、産官学の連携によって進んでいる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、5年間で100数十億円規模に上る見込みの予算で大学…