中国の自動車動力バッテリーの生産能力は過剰だ。各メーカーが公表したバッテリー生産能力の計画値を合計すると、2017年年末には230.1GWhにも達する。これは、中国国泰君安証券のアナリスト徐雲飛氏が中国バッテリー企業上位50社をリサーチした結果。この合計値は中国政府が定めた2020年の目標値である100GWhの2.3倍となっている。このような大きな生産能力を生み出した背景には、中国政府が2017年3月に「自動車用動力バッテリー産業の発展を促進する行動方案」を公表して、バッテリー産業を推進していることがある。

 徐氏のリサーチによれば、2017年に生産能力の計画値が8GWh以上になる会社は、沃特瑪(OptimumNano、20.4GWh)、CATL(18GWh)、BYD(16GWh)、国軒高科(10GWh)、北京国能(10GWh)、天津力神(10GWh)、孚能科技(10GWh)、億緯リチウム能(9.5GWh)、広西華能(8GWh)、深セン比克(8GWh)と10社があり、全産業の生産能力の52%を占めている。このほかに、5GWh以上8GWh未満の企業が3社、3GWh以上5GWh未満の企業が17社、3GWh未満の企業が20社もあった。ちなみに、2016年には、生産能力が8GWhを超えた会社は3社のみで、全産業に占める割合も28%に留まった。

徐氏が公開した中国自動車動力バッテリー生産能力計画値
徐氏が公開した中国自動車動力バッテリー生産能力計画値
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 なお、中国化学と物理電源産業協会が公表したデータによれば、2016年に中国の自動車動力バッテリーの計画生産能力が101GWhに達したものの、生産実績は30.8GWhに留まっており、生産能力がわずか30.5%しか使われていないことになる。2017年から中国政府が電気自動車(EV)などの新エネルギー車に与える補助金を減らしたため、「2017年にはバッテリーの需要が大きく伸びず、37.5GWhにとどまる」と徐氏は予測している。これは、企業の生産能力計画値に対して、市場需要がわずか16.3%しかないことになる。

 生産能力と需要の間の大きなギャップを埋めるために、中国のバッテリー企業が新エネルギー車企業との協業に走った。たとえば、CATLが2017年5月に上海汽車と共同で自動車動力バッテリー会社とバッテリーパッケージ会社を合同設立した。バッテリーの提供先を上海汽車に確保した。国軒高科が北汽新能源に出資して、EVのEC180への特別供給権を手に入れた。沃特瑪が「新能源汽車産業創新連盟」を立ち上げ、新エネルギー車企業だけではなく、部品や素材などのサプライヤー企業も入れて、連盟内の企業は互いに商品供給し合うようにしている。ただし、このような動きを取れたのは資金力やブランド力のある大手企業に限られており、中小企業は経営環境が厳しくなり、淘汰必至となるだろう。

■参考資料: 「徐雲飛氏の自動車動力バッテリー産業の分析レポート」(中国語)