2017年の中国新エネルギー車の販売不振が必至だ。中国自動車工業協会は中国メディアに対して、「少なくても2017年第1四半期の新エネルギー車の販売は楽観的に見ていない」と明言した。これは、中国政府が新エネルギー車に対する補助金額を段階的に減少させる政策を2017年1月1日から実行し始めたためだ。中国の補助金政策では、2016年と比べて、2017~18年までは国家補助が20%減、2019~20年までは国家補助が40%減、2020年以降は国家補助を撤廃するとなっている。さらに、中央政府が地方政府による補助も国家補助の50%を超えてはいけないと上限を設けた。

 中国政府が2013年から電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などの新エネルギー車に対して、購入時に取得税の免除やナンバープレートの無条件提供だけではなく、電池だけでの航続距離やバスの大きさなどに応じて、自動車メーカーに2回目の現金補助を提供する施策を打ち出した。さらに中央政府と同金額の補助額を出す地方政府も多かった。

 例えば北京でBYD社の「E6」という電動SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)を買った場合に、20.88万元(約345万円)の販売価格に対して、中央政府が5.5万元(約91万円)、北京市政府が5.5万元、合計で11万元(約182万円)にも上った補助金を出して、消費者が9.88万元(約163万円)で電動SUVを購入できる。さらに、自動車取得税が免除され、抽選しなければならないナンバープレートも与えられて一般の自動車よりは買得感があった。

 この政策は大気汚染の改善や新エネルギー車の技術開発を促進する目的だったため、補助金額が技術の進歩とともに年々減少するものだと2015年にも明らかになっている。しかし、EVの乗用車を底上げするために、減少傾向にあった補助金を2016年の1年間に限定して逆に増やしていた(表1)。

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 このため、中国の新エネルギー車市場に駆け込み需要が生じて、2016年の中国新エネルギー車の販売台数は世界最多の50.7万台となった。

 また、多額の補助金を狙って多数の自動車メーカーが不正に走った。認定基準をクリアしていない車に不正に許可を入手したり、関連企業にクルマを販売することで市場に流通させていなかったり、消費者に販売したが補助金を取得してから未使用のまま放置したりして、2016年の新エネルギー車が好調だったことを演出していた。

 「中国工業と情報化部」、「発展と改革委員会」、「財政部」、「科技部」の合同調査チームが93社の新エネルギー車製造メーカーを調査した結果、不正行為が特に厳重だった5社を公表して罰金をかけたが、他の会社の調査結果を「非公表」にした。