中国半導体産業は大きく成長している。中国半導体産業協会が公開したデータによると、2016年中国半導体売上高は4300億元強(約6兆8800億円)との見込み、前年比は20%増となる見通しである。一方、2016年11月にWSTS(世界半導体市場統計)は、2016年世界半導体市場の成長率は前年比0.1%減のほぼ横ばいとなると発表していた。

 世界的に半導体不振を尻目に邁進している中国半導体産業。大きく発展を遂げた理由は、(1)政府が促進策を出す、(2)政府系投資会社や大手企業が半導体促進の専用ファンドを立ち上げる、(3)ファンドからは設計、製造、装置、材料、計測の全分野にわたって有力企業に投資する、(4)投資を受けた企業がファンドに利益還元する、(5)企業が強く育てられたら、投資を回収して次の企業に投資する、という仕組みにある。

 中国政府は2014年6月に、2030年までの半導体産業の発展ロードマップを含む「国家集成電路産業発展推進綱要」を発表した。同年9月に「国家集成電路産業投資基金」という半導体産業に特化したファンドを立ち上げた。参加会社は、国家開発銀行の子会社である「国開金融」や北京技術開発区が設立した「北京亦庄国際投資」、中国たばこ総公司、中国モバイルといった国有投資会社や大手国営企業の18社が1387.2億元(約2兆2200億円)を拠出した。

 「国家集成電路産業投資基金」は、半導体産業の有力企業や半導体産業の集積地域に投資する。投資対象はIC設計、製造、パッケージング検査、材料およびサプライチェーンをカバーしている。2017年現在、基金が43のプロジェクトに投資し、承諾した投資金額が818億元(約1兆3000億円)、実際に入金できた金額が560億元(約8900億円)となった。また、上記の投資に合わせて、地方政府も別途計2500億元(約4兆円)を各地域の半導体企業に投じた。

 これらの投資を受けて、中国の半導体企業が大きく進歩した。たとえば、海思半導体(Hisilicon)が麒麟950、955、960という三つの16nmルールFinFET技術を用いたSoCチップを設計した。また、中芯国際(SMIC)が28nmノード対応でポリシリコンゲート(Poly/SiON、HLP)プロセスを採用したプロセッサーの量産化を実現し、28nm製造プロセスの高誘電率膜/金属ゲート(HKMG:High-k/Metal gate)技術も量産に使われた。そのほかに、展訊通信(SPREADTRUM)社が8コア64ビットLTE SoCの設計を用いて世界10位の通信チップ設計会社までに成長してきた。江蘇長電科技は世界4位のパッケージ組立企業になっている。

  「国家集成電路産業投資基金」の総経理丁文武氏が2017年1月14日に上海で開催したフォーラムで2017年に主な注目すべき動きを以下のように紹介した。

(1)メモリー分野では、紫光や長江メモリーに240億ドルを投資する。
(2)ハイエンド製造プロセス分野でも投資活動がすでに始っている。
(3)パワー半導体分野では、IC設計や製造プロセスの両方とも投資対象を選考している。
(4)CPU分野では、世界先端企業と大きな距離があって、発展の方向性をどこにするかは2017年に決める。
(5)FPGA分野では、Lattice社を取り下げて数社を選考中。
(6)MEMSセンサーとモバイルIoT分野では、現在適切な投資対象がないが、国内の市場ニーズが大きい。
(7)車載エレクトロニクス分野では、一定規模の中国企業がまだ存在していない。
(8)半導体製造装置分野では、海外企業と競争できる中国企業がまだ見つかっていない。

 2016年の中国半導体産業実績は、2017年3月23日-24日に南京で開催する「ICMarketChina2017」の会場で発表される。