中国の最高国家行政機関である国務院は1月17日、重要産業への外国資本の参入制限を従来より大幅に緩和する通達を公表した(通達へのリンク)。通達は二十カ条にも上り、金融、保険などのサービス業、先端製造業や知能化製造、グリーン製造、鉄道を始めた社会インフラ、鉱業など、これまで外国資本の参入を制限していた分野を対象とする。制限の撤廃・緩和により外国資本のさらなる参入を促進する。また、税金の優遇や土地の優先的な提供、価格の低減にまで言及している。政策の設定日は2017年1月12日だった。その5日後に公表することは、中国経済情勢の緊迫感と、政府の本気度をうかがわせる。

 また、中国の習近平国家主席は、1月17日にスイスのダボスで開幕した「世界経済フォーラム(ダボス会議)」で講演し、「これから5年間、中国が合計8兆ドルの商品を輸入し、6000億ドルの外国投資を誘致する」と初めて、外国資本誘致の数値目標を披露した。

 以下に、国務院通達の全文翻訳を掲載する。

中国国務院がホームページで通達を全文公開した
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中国国務院がホームページで通達を全文公開した

国務院、開放促進と外国資本の積極的に活用する施策に関する通知(全文)

各省、自治区、直轄市、国務院各部、各直轄機関:

 外資活用はわが国の対外開放の基本国策とオープンな経済体制の重要な部分であり、経済発展と改革を深めるプロセスの中に、積極的な役割を果たしている。現在、グローバル投資と産業移転は、新しい傾向が示されている。わが国の経済も世界経済に入れ込んで新たな状態になっており、外国資本の利用も新しいタスクに直面して新しい課題となっている。「国務院による開放型経済新体制の構築に関する意見」を着実に実行して、更なる外資利用を促進し、良好なビジネス環境を備えていく。また、行政簡略と地方分権、緩和と管理の融合、サービスの最適化、制度による取引コストの低減によってウィンウィンの状況を作り出すために、下記に通知する。

一、さらに対外開放を拡大する

(一)開放と発展を指導理念とし、高レベルの開放を促進する。そのために「外商投資産業指導目録」と関連する政策や規制を修訂して、サービス業、製造業、鉱業などの分野における外国資本の参入制限を緩和する。また、イノベーション発展戦略の実施や製造業の転換アップグレードなどに外国資本の参加や、外国人人材の中国起業に支援する(国家発展改革委員会、商務部が主導する)

(二)サービスは、重点的に銀行類金融機関、証券会社、証券投資ファンド管理会社、先物会社、保険会社、保険仲介機構の外国資本の参入制限を緩和する。会計および監査、建築設計、格付サービスなどの分野に外国資本の参入制限を開放する。電力、通信、インターネット、文化、教育、交通運輸などの分野における秩序のある開放を促進する。(国家発展改革委員会、商務部が主導し、教育部、工業と情報化部、人的資源・社会保障部、住宅都市建設部、交通運輸部、文化部、人民銀行(中央銀行)、新聞出版ラジオテレビ総局、国家ネットワーク通信弁公室、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会がそれぞれ担当する)

(三)製造業は、重点的に鉄道輸送機器の製造、オートバイの製造、燃料エタノールの生産、オイル加工などの分野における外国資本の参入制限を廃止する。鉱業は、シェールオイル、オイルサンド、シェールガスなどの非通常型石油・ガス・鉱物資源の参入制限を緩和する。石油・ガス分野での外国協力プロジェクトは、従来の許可制から届け制に転換する。(国家発展改革委員会、商務部が主導し、工業と情報化部、国土資源部、国家食糧局、国家エネルギー局がそれぞれ担当する)

(四)外国企業が中国企業と同様に「中国製造2025」の戦略政策や実施に適用とする。ハイエンド製造業、知的製造、グリーン製造などの製造分野と、工業デザインとイノベーション、エンジニアリングコンサルティング、先進的な物流、検査・テスト・認証などの製造サービス分野への外国資本の投資に奨励して、伝統産業の転換を促進する。(国家発展改革委員会、工業と情報化部、商務部、国家質量監督検験検疫総局がそれぞれ担当する)
(五)エネルギー、交通、水利、環境保護、行政公共事業などを含む社会インフラの建設には、法律法規に従って特別許可制の形で外国資本の参入にサポートする。この分野の関連支援政策は、外国資本のプロジェクトの建設と運営にも同様に適用される。(国家発展改革委員会、財政部、住宅都市建設部、交通運輸部、水利部、人民銀行がそれぞれ担当する)

(六)外国企業と中国企業、研究機構の研究開発の協力・合作に支援する。外国企業による研究開発センター、技術センターの構築や、ポスドク研究ステーションの設立にサポートする。平等原則に基づいて、外資系企業が国家レベルの科学技術プロジェクトへの参加を許可する。外資系企業は中国企業と同様に、研究開発費用の控除やハイテク企業や研究開発センターに対する優遇政策に適用する。(国家発展改革委員会、科技部、財政部、人的資源・社会保障部、商務部、税務総局がそれぞれ担当する)

(七)海外のハイレベル人材の中国起業に支援する。技術型企業を創立した、永住許可証を持つ外国ハイレベル人材に対して中国公民と同等の待遇を与える。また、外国ハイレベル人材および配偶者、子女に対して、複数回ビザや在留申請などは規則に従って便宜を提供する。(科技部、公安部、人的資源・社会保障部、国家外国専門家局がそれぞれ担当する)